2025-03-11

イタリア料理の商標あれこれ100選「第15話:Soave[ソアーヴェ]ほか」

 こんにちは、鈴木三平です。
 第15話はワインの第3弾。「SOAVE」「SAN GIMIGNANO」「PROSECCO」「NEBBIOLO」を取り上げます。
<参考文献>
イタリアワインの教科書-イタリアワインのコンプリートブック よくわかる基礎からDOCG&DOC最新情報まで(IKAROS MOOK)
著者 林 茂 東京 イカロス出版 2016年11月

Ⅰ.SOAVE
1.辞書情報
Soave[ソアーヴェ](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷161ページ)
男 ヴェネト州ヴェローナ地方産の辛口の白ワイン.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「(ソアベ , ソアーベ , ソアヴェ or ソアーヴェ」の検索結果

それなりに知られている名称だとは思うのだが、意外と寂しい。明らかなノイズは除去した。

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
Soave
File number PDO-IT-A0472
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000003321

4.コメント
 商標(1)はヴェローナの商工会議所のようなところ、(2)はヴェローナとヴィチェンツァの同様なところとの共同出願で、いずれも団体商標、つまり構成員に使用させるものといえる。ともに指定商品は出願時の「ワイン」から、地域を限定して登録がされている。Soave等を産地(原則として商標として機能しない)と認定しつつも、その組合による出願だから、その組合及びその構成メンバーを商品の出所とし、「商標として機能する」と認めたものといえる。


Ⅱ.SAN GIMIGNANO
1.辞書情報
 San Gimignano[サンジミニャーノ](上記『イタリア料理用語辞典』152ページ)
固女 イタリア中部トスカーノ州の都市.
Vernaccia[ヴェルナッチャ](同184ページ)
①女 ぶどうの木の一品種.
②男 ヴェルナッチャ種のぶどうから作る赤・白ワイン. ~ di San Gimignano トスカーナ州サン・ジミニャーノ産の白ワイン
注:固=固有名詞 女=女性名詞 男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「サンジミニャーノ」の検索結果

 

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
San Gimignano
File number PDO-IT-A1464
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000006254

4.コメント
 組合出願の団体商標なので、辞書通りのものだが、登録されてもいいように思う。「商標として機能しない」という拒絶理由の通知があったが、おそらく上記「Soave」のような団体の証明書の提出があれば、登録されたのに、出て来なかったのではなかろうか?


Ⅲ.PROSECCO
1.辞書情報
Prosecco [プロッセッコ](上記『イタリア料理用語辞典』138ページ)
男 ぶどうの木の一品種;プロセッコ種のぶどうから作るヴェネト州産の白ワイン,スパークリングワイン.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「プロセッコ」の検索結果

 

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
Prosecco
File number PDO-IT-A0516
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000002936

4.コメント
 願書では指定商品が「ぶどう酒」だったが、拒絶理由通知に対して上記の通り指定商品を補正して登録されている。Prosecco部分は産地等の表示であるが、出願人が「プロセッコ原産地統制呼称統制委員会」なので登録がされている。地域ブランド的、団体商標的なものであるといえるが、図形入りのものは珍しい。


Ⅳ.NEBBIOLO
1.辞書情報
Nebbiolo[ネッビオーロ](上記『イタリア料理用語辞典』116ページ)
男 ぶどうの木の一品種;ネッビオーロ種のぶどうからつくるピエモンテ州産の赤ワイン.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ネッビオーロ」の検索結果
 これも少ないが、0ではない。

 

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
Nebbiolo d’Alba
File number PDO-IT-A1213
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000006504

4.コメント
 いわゆる「小売等役務(小売や卸サービス)」に関する商標で、組合ではなく、日本国内の一般企業の出願である。当初の指定役務から、実質的には「果実酒の小売等役務」部分を削除して登録が認められている。Nebbioloはワインの一種類だから、ワイン(果実酒)の小売サービス等については「商標として機能しない」という判断がされたといえそうである。つまり、ネッビオーロといえるワインに、上記表示は自由使用と判断されたということである。
当初の指定役務 飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
補正後、登録が認められた指定役務(酒類に関するもののみ記載) 泡盛・合成清酒・焼酎・白酒・清酒・直し・みりんの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ビール・洋酒・酎ハイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,中国酒の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬味酒の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

 

Ⅴ.ABRUZZO
1.辞書情報
Abruzzo[アブルッツォ](上記『イタリア料理用語辞典』2ページ)
固 男 イタリア中東部の州.
注:固=固有名詞 男=男性名詞

2.商標の状況

Montepulciano d’Abruzzo e Marche[モンテプルチャーノ・ダブルッツォ・エ・マルケ](同113ページ)
男 アブルッツォ州。マルケ州産の赤ワイン.

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「アブルッツォ」の検索結果

 数年に1件出てくる程度なところ、2009年だけ異常値を示しているのは、この地域で大地震があったからである。

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
ワインに関する地理的表示の登録例
Abruzzo
File number PDO-IT-A0880
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000002983

Montepulciano d’Abruzzo
File number PDO-IT-A0723
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000002803

4.コメント
 WTO加盟国のワインの産地も含めた産地表示等(1条1項3号、4条1項16,17号)で登録を拒絶されている。アブルッツォのワイン組合の出願であるから、団体商標にして証明書でも出せばよかったのだと思うのだが、その頑張りが足りなかったようだ。


<注>
 構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
 なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。

 今回15話めで、累計47件となった。次回は、「ラグー」と「ブロード」について扱う予定。