2025-03-18

イタリア料理の商標あれこれ100選「第16話:ラグーとブロード」

 こんにちは、鈴木三平です。
 第16話は「ラグーとブロード」です。両方とも、料理教室でも出てきそうな基本用語ではないかと思いますが、それでもちょっとした商標問題があったのです。

Ⅰ.RAGU
1.辞書情報
ragù[ラグ](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷141ページ)
男 肉汁,ミートソース,シチューの一種. al ~ ミートソースであえた. ~[alla] bolognese ボローニャ風ソース =salsa [alla] bolognese.
注:男=男性名詞

「コトバンク(出典:和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典)」
【ragù(イタリア)】
イタリア料理で、肉や魚介類を細かく切って煮込んで作るソース。ミートソースなどがある。パスタに用いることが多い。◇『ラグーソース』ともいう。
https://kotobank.jp/word/%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%BC-655841
(2025年2月14日閲覧)

2.商標の状況

 第29類「パスタソース,スパゲッティソース,ミートソース,トマトを主材とするパスタソース,チーズを使用したパスタソース,野菜を主材とするパスタソース,肉を主材とするパスタソース,カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「トマトソース,チーズディップソース,野菜入りのディップソース」についての商標登録を取り消す。
 「煮込み料理、ミートソース等の煮込みソース」を認識させる「RAGU」の文字からなる本件商標をその指定商品のうち、第29類「パスタソース,スパゲツティソース,ミートソース,トマトを主材とするパスタソース,チーズを使用したパスタソース,野菜を主材とするパスタソース,肉を主材とするパスタソース,カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「トマトソース,チーズディップソース,野菜入りのディップソース」に使用するときは、取引者・需要者にその商品が煮込みソースあるいはこれを原材料とした商品であることを想起・認識させるものであって、単に商品の品質・原材料を表示するにすぎないというのが相当である。

3.その他情報
(1)吉川敏明『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』 柴田書店 2010 199,200ページ
「主人公がラグー(煮込み)を作ろうと肉屋へ買い物にいくと、」
「ボローニャ風が牛の挽き肉で赤ワイン風味なのに対し、ナポリのラグーは牛や豚の塊肉を煮るトマト味がベースの煮込みです。」

(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ラグー and (ソース OR パスタ)」の検索結果

 

 絞り込みがどの程度適切か等という問題もあるかもしれないが、上記商標の登録前から、ほぼ毎年出現していて、それなりにコンスタントだといえそうである。2004年に2件、2020年に1件、明らかなノイズがあり除去した。

4.コメント
 商標「RAGU」は、調味料、加工食品類について広く登録されたが、登録異議申立があり、調味料類については「商標として機能しない」という理由で登録が取消された。取消当時も、それなりに「ラグー」は商品やメニュー等に使用されていて、一般消費者はともかく、業者やイタリア料理好きだったら、「挽き肉の煮込みだったっけな?」程度には知っているだろうという判断かと思う。自由使用の判断の影響という訳でもないかもしれないが、最近では日本の街のイタリア料理屋で、「ラグーソースのパスタ」も、結構見かけるようになっているのではないかと。


Ⅱ.BRODO
1.辞書情報
brodo[ブロード](上記『イタリア料理用語辞典』26ページ)
男(スープを作るための)煮だし汁,ブイヨン,スープ.
~ di pollo 鶏がらでとっただし汁,チキンブイヨン.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)食にまつわることわざ・格言・慣用句-6
上記『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』125ページ
 「●ブロード篇
 ブロードとはブイヨンのこと。和食でいう昆布だしやかつおだしですから、イタリア料理におけるいちばんの基本。」

(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ブロード AND (だしじる OR だし汁 OR 出汁)」の検索結果

 

4.コメント
 商標(1)が登録されたが、指定商品との関係から、チキンスープ等に「Brodo di pollo」と表示することに権利行使はできないだろうから、逆に言えば自由使用が確立されたといえる。その状況下、(2)が出願された理由は不明だが、「商標としての機能しない」という登録拒絶の理由とともに、類似あり(おそらく(1)と)という拒絶の理由も出ている。審査官的には、「(1)が消えたら上記理由だけだけれど、残っているから類似とも言っておくぞ。欲張りなさんな。」ということなのであろう。(1)と(2)とは、商品についても抵触関係にある。「ブロードの基本」なんて、料理教室で教えないですかね?


<注>
 構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
 なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。

 今回16話めで、累計49件となった。次回は、コーヒー類について扱う予定。