(令和7年2月4日 知財高裁令和6年(行ケ)第10060号 「JPCスポーツ教室」事件)
事案の概要
原告(審判請求人・出願人)は、本願商標「JPCスポーツ教室」の文字からなり、指定役務を41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、スポーツの興行の企画・運営又は開催、運動施設の提供、運動用具の貸与」とする登録出願をして拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判(2023-17017)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて、提訴した事案である。拒絶理由は商標法4条1項6号該当である。
判 旨
引用標章「JPC」は、商標法4条1項6号の「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」を表示する標章であるといえる。本号の「著名なもの」とは、4条1項10号の「需要者の間に広く認識されている」と同等の意義を有すると解すべきである。「JPC」の文字が、国語辞典に掲載されておらず、あるいは、仮に「JOC」の文字より知名度が低いとしても、なお、引用標章は、本願商標の指定役務に係る需要者の間において広く認識されており、著名性を有すると認めるのが相当である。 本願商標の構成中、「JPC」の文字は、「日本パラリンピック委員会又はその略称」を表示する標章として著名な引用標章と構成文字を同一にするから、当該文字部分は、「日本パラリンピック委員会」ほどの意味合いを理解させるものである。本願商標は、当該文字部分によって、「日本パラリンピック委員会」に関するものであることを強く理解、認識させるものであり、「JPC」 の文字は、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。 また、「スポーツ教室」の文字は、本願の指定役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授」との関係において、役務の質を表示したものであって、役務の出所識別標識として機能しないか、その機能が極めて弱いものといえる。そうすると、本願商標の構成中の「JPC」の文字部分は、強く支配的な印象を与えるということができるから、本願商標は、その構成中の「JPC」の文字部分を要部として抽出し、商標の類否判断をすることが許されるといえる。したがって、本願商標は、要部である「JPC」の文字に相応して、「ジェイピイシイ」の呼称及び「日本パラリンピック委員会」の観念を生じるものといえる。そして、引用標章と本願商標の要部「JPC」と引用標章を比較すると、両者はその構成文字を同じくし、外観、呼称及び観念において同一である。そうすると、本願商標と引用標章は類似するというべきである。
コメント
本件事案は、本願商標「JPCスポーツ教室」について、日本パラリンピック委員会の略称である公益標章「JPC」を引用した4条1項6号の該当性が争われて、知財高裁もこれを認めて、審決を維持したものである。6号事案は稀有なものであり、公益標章の著名性及び類似性が要件で、これらが肯定された。まず、6号の趣旨の一つとして出所の混同を挙げ、著名性については、4条1項10号の周知性と同等と解し、そして類否判断においては、要部観察をしたものである。結論的には妥当と思うが、10号や11号等に準じた該当性の認定、判断は、指定商品・役務に関係なくすべての出願に適用される公益規定6号の趣旨や規定振りと離れたものである。稀有な先裁判例(平成21年5月28日 知財高裁平成20年行ケ第10351号)に依ったものと思われるが、妥当とは思われない(拙著「商標法の解釈と裁判例」改訂版111頁以下)。なお、「著名」の用語は8号にもあり、前掲本件解釈とは異なる(平成17年7月22日 最高裁平成16年(行ヒ)第343号)。