こんにちは、鈴木三平です。
第19話はチーズ「PECORINO」と「BURRATA」、「OLIO」を取り上げます。
Ⅰ.PECORINO
1.辞書情報
pecorino [ペコリーノ]町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷128ページ)
①形 羊の.Cacio(formaggio)~ 羊乳チーズ.
②男 ペコリーノチーズ,羊乳のチーズ
注:形=形容詞;男=男性名詞
2.商標の状況

3.その他情報
(1)吉川敏明『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』 柴田書店 2010 132ページ
(注:カルボナーラの)、材料はスパゲッティ、卵、グアンチャーレ(豚ホホ肉の塩漬け)、ペコリーノチーズと、持ち運びが楽で、その一帯ではごくふつうに手に入る材料でできるスパゲッティ料理料理だったのです。」
(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「(ペコリーノ」の検索結果

4.コメント
まず、商標(1)(2)(5)の加工食品グループのものと、(2)(3)の外食サービスグループのものに分けてみることができる。例え商標が類似していても、商品・役務が抵触関係にないから、類似として登録が拒絶される関係にはない関係でである。
(1)は「加工食料品」という広範囲、1988年の登録で、普通の文字商標だから、「ペコリーノ」はいわば造語扱いである。(2)は(1)と同じ者の同じ日の出願で、これも指定商品が広範囲だから、図形が入っているけれども「PECORINO」部分は造語扱いといえる。89年の登録である。(5)は(1)(2)の権利消滅後の出願だから(1)(2)と類似とされることはないが、審査を経て「ペコリーノを使用した」商品に限定がさせられているから、「PECORINO\ペコリーノ」については「商標として機能しない」と判断したものといえる。2018年の判断である。
外食グループについて、(3)はイタリア料理を「主とする」だから、限定ないものといえ、(2)と同様に図形が入っているけれども「PECORINO」部分は造語扱いといえる(95年)。いっぽう(4)は(3)の権利消滅後の出願であるが、、「ペコリーノ\PECORINO」について、商標登録がされずに、「商標として機能しない」という登録拒絶が2006年に通知され、確定した。この出願の前ぐらいから、ぽつぽつを「ペコリーノチーズ」の新聞記事が出るようになっているから、そんな判断がされているのだろう。
Ⅱ.BURRATA
1.辞書情報
burrata[ブッラータ](上記『イタリア料理用語辞典』28ページ)
女 (プーリア地方の)牛,水牛の乳で作るチーズ.
注:女=女性名詞
2.商標の状況

<不服2016-000197の審決から抜粋(登録拒絶査定を維持)>
構成中「十勝」の文字は、…、北海道東南部に当たる地域を表示するものであり、本願の指定商品「乳製品」を始め飲食料品との関係において、「十勝」地域で生産、製造された商品を表示するもの、すなわち、商品の産地を表示するものとして普通に用いられているものである。
また、「ブラータ」の文字は、前記3(3)のとおり、「イタリアプーリア地域発祥のモッツァレラを生クリームと混合し、モッツァレラの皮でつつんだチーズ」を指称する「burrata」を表示するものとして普通に用いられているものである。
そうすると、本願商標は、その構成全体から「十勝産のブラータ」であることを認識させるにとどまるものであり、これを本願の指定商品中の「チーズ」に使用するときは、商品の産地、品質を表示するにすぎないものといわなければならない。
3.その他情報
記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ブッラータ」の検索結果

4.コメント
スーパーでも「ブラータ」を見かけるようになった。上記の「十勝ブラータ」以外に「十勝ブッラータ(2015-025671)」についても同様の理由で登録拒絶の査定が確定している。これらが登録されたら、イタリア南部の人を怒らせそうだ。
Ⅲ.OLIO
1.辞書情報
Clio [オーリオ]《複-li》(上記『イタリア料理用語辞典』119ページ)
男 油,オリーブ油.
注:男=男性名詞
2.商標の状況

3.その他情報
新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「オーリオ」の検索結果

4.コメント
上記の商標については、指定商品にオリーブオイルや食用油脂が含まれていないとはいえ、「商標として機能しない」旨の登録拒絶の理由が通知されている。2010年、それほど古くない出願でもあり、特に異論もないだろう。
<注>
構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。
今回19話めで、累計59件となった。次回は、魚介類、魚介由来のものについて扱う予定。