2025-04-22

工藤莞司の注目裁判:要部「VALENTINO」において類似するとされた事例

(令和7年2月27日 知財高裁令和6年(行ケ)第10089号 「VALENTINO」登録取消決定取消請求事件)

事案の概要
 原告(本件商標権者)が有する本件商標に係る商標掲載公報は令和4年5月11日発行されたところ、同年7月6日、被告(異議申立人・引用商標権者)から、商標法4条1項11号違反を理由とした商標登録異議(2022-900274)の申立てがされ、特許庁は本件商標登録を取り消す決定をしたため、原告は、知財高裁に対し、本件決定の取消しを求めて訴訴した事案である。原告の本件商標(右上図参照 登録第6550051号)、指定商品25類「履物」、登録異議申立人の引用商標(下図参照 国際登録第975800号)、指定商品18類「略」及び25類「Clothing、footwear、headgear.」である。

 

判 旨
 本件商標が結合商標と理解されることを前提に、その分離観察の可否を検討するに、本件欧文字中の「VALENTINO」の部分は、本件商標の登録査定時において、国際的に知られたデザイナーであるヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザイナーのデザインに係る商品を表示するものとして指定商品の需要者の間に広く認識され、周知・著名であったVALENTINO等のうち、「VALENTINO」の欧文字商標と同じ構成文字からなるものであるから、取引者、需要者に対し商品・役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができる。そうすると、本件商標は、「VALENTINO」の欧文字を要部として抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許される。本件商標からは、本件欧文字部分の全体に相応した「ジャンニヴァレンティノ」の称呼のほか、本件商標の要部に相応した「ヴァレンティノ」の称呼も生じ、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念が生じる。            
 本件商標の要部「VALENTINO」の欧文字は、引用商標の要部「VALENTINO」の欧文字とつづりを同じくするものであり、本件商標と引用商標は外観上相紛らわしい。また、本件商標と引用商標の要部からは、いずれも「ヴァレンティノ」の称呼が生じ、称呼において共通する。そして、本件商標と引用商標の要部からは、いずれも「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ又はその創設した会社のデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念を生じ、観念において共通する。したがって、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのある類似の商標である。

コメント
 本件事案において、知財高裁は、本件商標と引用商標とは、要部「VALENTINO」において、外観、称呼及び観念を同じくする類似の商標と判断したものである。判決認定のように、本件商標は、ヴァレンティノ・ガラヴァーニあるいはその創設会社デザインに係る商品を表示する周知・著名商標「VALENTINO」を要部とするもので、当然の類似商標の判断である。むしろ、異議申立てを待つまでもなく、職権審査の範囲であろう。