(令和7年2月27日 知財高裁令和6年(行ケ)第10087号 「UNBRAKO」不使用取消事件)
事案の概要
被告(被請求人・商標権者)が有する本件商標「UNBRAKO」(標準文字 登録第6162919号)、指定商品6類「金属製金具」について、原告(請求人)は、商標法50条1項に基づく不使用取消審判(2022-300932)の請求をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて訴訟を提起した事案である。
判 旨
前記認定事実によれば、中島工機は、本件商標の通常使用権者であるところ、本件商標は「UNBRAKO」の標準文字から成り、他方、乙2製品の包装箱の「Unbrako🄬」との表記は、その構成から「Unbrako」の文字部分が独立して自他商品識別標識として機能するということができる。そして、本件商標「UNBRAKO」と乙2製品の使用商標「Unbrako」は、大文字、小文字の相違はあるが、綴りが共通し、称呼も同じになるから、社会通念上同一というべきである。また、乙2製品のボルトは、指定商品「金属製金具」の範疇に属する。そうすると、本件商標の通常使用権者である中島工機は、要証期間である令和3年6月9日、株式会社小野に譲渡販売し、本件商標が表示された包装箱に梱包された金属製金具(ボルト100個)を納品したものと認めるのが相当であり、指定商品について登録商標の使用(商標法50条、2条3項2号)をしたというべきである。原告は、商標法50条の「登録商標の使用」にいう出所表示機能を発揮する態様での商標の使用ではないなどと主張する。しかし、商標法50条の趣旨は、登録された商標には排他独占的な権利が発生することから、長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは、当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め、国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので、一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことを認めたものである。そうすると、商標法50条所定の「使用」は、当該商標がその指定商品又は指定役務について商標として使用されていれば足り、その商標としての使用が商標権者を商品の出所として表示する場合に限定されるものではないというべきである。
コメント
本件事案は、不使用取消審判において、原告・商標権者が通常使用権者の使用を立証し、知財高裁もこれを認めて請求を棄却し、審決を維持したものである。判決は、侵害訴訟に係る商標的使用については本件事案では不要としているが、原告の主張は、『本件商標とは無関係なメーカーの出所を特定し、販売するものであり、また、商標使用の効果を原告に帰属させるものであるから、商標法50条の「登録商標の使用」にいう出所表示機能を発揮する態様での商標の使用ではない』と主張したもので、これは無理筋である。50条は、その取消要件に関し通常使用権者の使用の有無をも明定している。