2025-05-19

工藤莞司の注目裁判:使用商品及び商標の同一性が認められて審決が維持された事例

(令和7年3月12日 知財高裁令和6年(行ケ)第10084号 「LUNA」不使用取消事件)

事案の概要
 原告(審判請求人)は、被告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標(右掲参照 登録第2700409号)の指定商品中5類「医療用腕環、これらの部品及び附属品」及び10類「医療用機械器具・これらの部品及び附属品」(「本件請求商品」)について、登録取消審判(2022-300305)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、本件訴えを提起した事案である。

判 旨
 使用商品は本件請求商品か 上記認定事実によれば、被告が製造してナカニシ社に納入した使用商品は、医療機器であるバリオス750のハンドピースにリングライトとして取り付けるものとして製造された製品であり、使用商品をバリオス750のハンドピースに取り付ける以外の用途に使用することはできないことが認められ、医療機器であるバリオス750のハンドピース専用の製品であるといえるから、使用商品は、医療機器の部品であって、本件請求商品のうち10類「医療用機械器具・これらの部品及び附属品」の範疇に属するものであると認められる。被告が、使用商標1を付した箱に使用商品を納め、これをナカニシ社に納入したことは、商品の包装に使用商標1を付したものを譲渡又は引き渡した行為に該当するから、使用商標1について商標法2条3項2号の「使用」をしたものと認められる。そして、この商標の使用は、令和4年1月19日ころであり、いずれも要証期間平成31年4月18日から令和4年4月17日までの間に行われたものである。上記の事実によれば、被告が、使用商標1を付した箱に使用商品を納め、これをナカニシ社に納入したことは、使用商標1の本件請求商品についての使用に該当すると認められる。
使用商標の同一性 使用商標1の構成は、「LunA」の欧文字を、「A」の文字を図案化してなる商標と認められる。そうすると、使用商標1は、構成文字が本件商標構成文字と同一であって、使用商標1からは本件商標と同一の称呼及び観念が生じると認められる。使用商標2の構成は、「LUNA」の欧文字商標と認められる。使用商標2と本件商標とを比較対照すると、その構成において、「u(U)」と「n(N)」について大文字と小文字の違いがあり、「A」の文字が図案化されているか否かの違いもあるものの、いずれも欧文字の「L」、「u(U)」、「n(N)」及び「A」の 4文字がこの順序で並ぶもので、使用商標2からは本件商標と同一の称呼及び観念が生じると認められる。以上によれば、使用商標1及び2と本件商標とを比較対照すると、その外観は異なるものの、商標を構成する文字、称呼及び観念において共通するから、使用商標1及び2は、いずれも、本件商標と社会通念上同一と認められる。

コメント
 本件事案においては、被告が立証した使用商品は本件請求商品か否か及び使用商標の同一性が争われたが、知財高裁は、いずれも肯定し認めて、審決を維持したものである。原告は、使用商品は医療用機械器具に組み込まれる構成部材としての汎用品と主張したが、知財高裁は、専用品と認定した。また、使用商標との同一性については、本件商標と称呼及び観念を同一にして社会通念上同一と認定した。いずれも妥当な認定である。