こんにちは、鈴木三平です。
第26話は麦関係です。「CONCHIGLIE」「ORZO」「POLENTA」「TORTELLONI」です。意外なことに、パスタ名について「先取り」的に商標権を取ってしまったようなものは、少なくとも今のところ見つかっていません。私の知識不足かもしれませんが…
Ⅰ.CONCHIGLIE
1.辞書情報
conchiglie[コンキッリエ](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷49ページ)
女 複 コンキリエ,シェルマカロニ(貝の形をしたパスタ).
注:女=女性名詞
2.商標の状況

3.その他情報
新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「コンキリエ」。

4.コメント
商標(1)によって、マカロニ類における「コンキリエ」は商標として機能せず、自由使用であることが可視化されたが、菓子等について(2)の出願があった。(2)は(1)と指定商品が異なるから、(2)が(1)と類似とされることはなく、現に(2)は「商標として機能しない」という理由で登録が拒絶されている。「貝の形をした菓子と認識」とでも判断されたのだろう。
Ⅱ.ORZO
1.辞書情報
orzo[オルゾ](上記『イタリア料理用語辞典』121ページ)
男 大麦.
caffe d’~ 大麦コーヒー(コーヒーの代用)
注:男=男性名詞
2.商標の状況

3.その他情報
新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「(オルゾ or オルツォ) and (麦 or ムギ)は2018年のオルゾに関する1件のみであった。
4.コメント
「オルゾ\Orzo」は大麦を意味するものだから、「商標として機能しない」旨の拒絶理由が通知されているのであろう。
同様の登録拒絶例

Ⅲ.POLENTA
1.辞書情報
polenta [ポレンタ](上記『イタリア料理用語辞典』134ページ)
女 ポレンタ(とうもろこし粉に水やスープを加えて火にかけ,固く練り上げたもの).
注:女=女性名詞
2.商標の状況

3.その他情報
(1)吉川敏明『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』 柴田書店 2010 104ページ
「ポレンタは北イタリアの伝統料理で、とうもろこしの粉を粥状に炊いたもの。」
(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ポレンタ」の検索結果

4.コメント
指定商品「ポレンタ」に商標POLENTA\VALSUGANA」である。VALSUGANAは以下の通りイタリアの地名のようだが、日本ではほとんど知られていないから、商標として機能する可能性もある。いっぽう、「ポレンタ\POLENTA」は、指定商品として記載することが認められるほどであるから、商品の一般的な名称といえる。つまり、この部分は「商標としては機能しない」から、自由使用といえる。ちなみに、商標の国際商品等の分類のニース協定の商品リストにも「Polenta」が掲載されており、国際的にも商品の一般的な名称と認められている。
<参考>
「世界の市町村」のウェブサイト
「ボルゴ・ヴァルスガーナ,」の見出しの下、「ボルゴ・ヴァルスガーナボルゴ・ヴァルスガーナ位置 : 国 イタリア, 地方 トレンティーノ=アルト・アディジェ州, 県 トレント自治.」との記載がある。
https://ja.db-city.com/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2–%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%8E%EF%BC%9D%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B8%E3%82%A7%E5%B7%9E–%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%
(2025年4月19日閲覧)
Ⅳ.TORTELLONI
1.辞書情報
tortelloni [トルテローニ](上記『イタリア料理用語辞典』176ページ)
男複 大型のトルテッロ(tortello).
tortello [トルテッロ]
男 揚げ菓子の一種;《複》(エミリア・ロマーニャ地方の)詰め物をしたパスタ.
注:男=男性名詞
「コトバンク」のウェブサイト(出典:和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典)
「トルテリーニ」の見出しの下、
「詰め物をした小型のパスタ。ゆでてソースやチーズをかけて食べるほか、スープに入れる。さまざまな形状のものがあるが、生地を薄くのばして1辺が3~5cm程度の正方形に切り、詰め物をのせて三角形になるように半分に折って周囲をとじてから、くるりと巻くように三角形の両端の角と角をつなぎ、指輪のような形に作るものが代表的。具材はひき肉・生ハム・卵・チーズなどを混ぜたものがよく用いられる。」との記載がある。
https://kotobank.jp/word/%E3%81%A8%E3%82%8B%E3%81%A6%E3%82%8A%E3%83%BC%E3%81%AB-1495698#goog_rewarded
(2025年4月19日閲覧)
2.商標の状況

3.その他情報
新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「トルテローニ」「トルテリーニ」の検索結果

4.コメント
「品質誤認」の拒絶がかかっている。tortelliniはtortelloniの複数形、食用のパスタだからトルテリ(ロ)ーニ単独であれば商標としての機能がなく自由使用、それ以外の商品に使えば品質誤認というところだろう。仮に指定商品を「トルテリーニ(食用のパスタ)」とでも補正すれば、少なくとも”trademark”部分は商標として機能するから、登録される余地があったといえる。
<注>
構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。
今回26話めで、累計89件となった。次回は、トマト関係を取上げる予定。