2025-06-09

イタリア料理の商標あれこれ100選「第27話:トマト」

 こんにちは、鈴木三平です。
 第27話はトマト関係です。イタリアと言えばトマト。「POMODORO」「POMODORINI」「SAN MARZANO」「PACHINO」「PIENNOLO」。イタリア料理用語辞典にも出ていない結構マニアックなものもあります。

Ⅰ.POMODORO
1.辞書情報
pomodoro [ポモドーロ]《複pomodori,pomidori,pomidoro》(町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷135ページ)
男 トマト.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
 新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ポモドーロ」。

 

4.コメント
 「トマト」を意味する“pomodoro”であるが、商標(1)については、旧法の出願公告(出願を無事通過)前に手続補正書が出されている。当時の詳細を知ることは困難だが、出願時に指定商品に含まれていた「果実飲料」を削除したものであるとすると、つじつまがあう。「トマトジュース」が果実飲料に含まれるため、「商品の原材料・品質」、つまり「商標として機能しない」という理由の拒絶が通知され、それを避けるためのものであるというところである。この出願・審査時と新聞記事(ヨミダス)に「ポモドーロ」が出現し出した時期も一致する。
 さて、(2)(3)については、旧法の出願公告(審査パス)後に登録異議申立てがあり、その結果として登録が認められなかったものである。これらも、商品の品質、原材料というところだろう。
 昨今の新聞記事の状況から、いまや「ポモドーロ」は、一般消費者にもそれなりに知られているといえそうだ。
 なお、“pomodoro”の語源は、黄金(oro)の(d’)リンゴ(pomo)だそうである。

参考:「料理王国」のウェブサイト
 「イタリア料理とトマト旅 2 ポモドーロと名づけた男 マティオーリ(トスカーナ州)」
https://cuisine-kingdom.com/tomato02
(2025年4月27日閲覧)


Ⅱ.POMODORINI
1.辞書情報
pomodorini [ポモドリーニ](上記『イタリア料理用語辞典』 なし)
「コトバンク」のウェブサイト(出典:小学館 和伊中辞典 2版)
「英 cherry チェリートマト
ciliegino(男),pomodorino(男) ciliegino [cilie̱gia無変]]」との記載がある。
https://kotobank.jp/jaitword/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%BC#goog_rewarded

2.商標の状況

<異議平09-090384の異議決定抜粋>
 取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もない。
 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件商標登録は、この取消理由によつて取消すべきものである。

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「(ポモ(ミ)ドリーニ(ノ))は0件であった。
(2)「株式会社佐勇」のウェブサイト
「POMODORINI DI COLLINA ポモドリーニ 甘いチェリートマトを皮剥きせずに、丸ごとジュースに漬けました。チェリートマトが持つ華やかな香りと強い甘み、バランスのとれた酸味などが
見事に調和した最高級品です。」との記載がある。
https://www.sayu.jp/il-pomodoro/
(2025年4月27日閲覧)

4.コメント
 上記商標について、商標登録を取消す旨の異議決定を読んでもよくわからないが、要するに「チェリートマト」「プチトマト」を意味し、BtoB(業務用)筋にはそれなりに知られているから、「商標として機能しない」等という理由で登録を取り消されているというところだろう。自由使用とは認められたが、最近でもポモドリーニという表示を目にする機会は少ない。


Ⅲ.SAN MARZANO
1.辞書情報
San Marzano[サンマルツァーノ](上記『イタリア料理用語辞典』 なし)
「旬の野菜百科」のウェブサイト
 「イタリアントマト・サンマルツァーノ種(San Marzano)」の見出しの下、「サンマルツァーノは代表的なイタリアントマトの一つで、古くからイタリアで栽培され続けてきました。『ローマ』と同じく調理用トマトなので生食向きではなく、過熱調理に適した品種です。水煮の缶詰にされているのもこの品種が良く使われています。」との記載がある。
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/TomatoSanMarzano.htm
(2025年4月27日閲覧)

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「サンマルツァーノ」の検索結果

 

(2)「Aquamarine」のウェブサイト
 「サンマルツァーノトマト」の見出しの下、「サンマルツァーノトマト は、イタリアのカンパニア州ナポリ近郊の サン・マルツァーノ・スル・サルノ (San Marzano sul Sarno) という小さな町が原産のプラムトマト(調理用トマト)の一種。 」との記載がある。
https://ameblo.jp/aquamarine-fl/entry-12807331869.html
(2025年4月27日閲覧)

https://www.google.co.jp/maps/search/sanmarzano+italy/@40.684278,13.9670789,10.03z?hl=ja&entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MDQyMy4wIKXMDSoASAFQAw%3D%3D

4.コメント
 上記「加工食料品」には、トマト缶詰等の「加工野菜」が含まれている。上記の商標については、個人的な記憶であるが、出願公告後、産地表示だから「商標として機能しない」という理由で拒絶査定となったものである。同じ商標が、調味料等について、出願公告後、登録異議申立で登録を拒絶されている(平01-041073)。


Ⅳ.PACHINO
1.辞書情報
pachino[パッキーノ](上記『イタリア料理用語辞典』 なし)

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)吉川敏明『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』 柴田書店 2010 157ページ
 「甘みの強いプチトマトとして注目されたパキーノも、シチリア州の村の名です。」

(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「パッキーノ」は0件であった

(3)「ameno cashmere | 公式オンラインストア」のウェブサイト
 「PACHINO RED」の見出しの下、「シチリア島、シラクーザ県の街「パキーノ」は、酸味と糖度が完璧に調和したミニトマトの原産地。」との記載がある。
https://ameno-cashmere.com/pages/pachino-red?srsltid=AfmBOoptu5HUkh8o4Z7HaQpIXvfQWESuE0l9_kReANzj-7hUZHSFSikK
(2025年5月26日閲覧)

4.コメント
 本件は生鮮トマトやその種苗に関する商標の出願だが、おそらくはトマトの種類であって「商標として機能しない」という趣旨で登録が拒絶されている。2002年のことだが、「インターネット時代の審査」といえそうだ。


Ⅴ.PIENNOLO
1.辞書情報
 piennolo [ピエンノーロ](上記『イタリア料理用語辞典』 なし)

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)「モンテ物産」のウェブサイト
 「失われつつあるナポリの赤い宝石”ピエンノロトマト” イタリア情報」の見出しの下、「ピエンノロトマトというのは” Pomodorino del Piennolo del Vesuvio DOP(ポモドリーノ・デル・ピエンノロ・デル・ヴェスヴィオ ディー・オー・ピー)”というDOP(原産地保護呼称)に指定されているトマトの品種で、このあたりで昔から作られているんだよ。」との記載がある。
https://www.montebussan.co.jp/italy/2014/001425.html
(2025年4月27日閲覧)

(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ピエンノ(ー)ロ」は0件であった

4.コメント
 上記の商標については「商標として機能しない」等という理由で登録を拒絶されている。トマトの種類ということであろう。図形もトマトのそれなりに普通の形状なので、これに他人の商品と識別できるような機能はなさそうだ。なお、審査前に第三者による刊行物の提出があった。


<注>
 構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
 なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。

 今回27話めで、累計94件となった。次回は、リストランテ・トラットリア等の外食サービスについて取上げる予定。