2025-06-10

工藤莞司の注目裁判:出願商標「のむシリカ」は識別力がないとされた事例

(令和7年4月17日 知財高裁令和6年(行ケ)第10105号 「のむシリカ」事件)

事案の概要
 原告(審判請求人・出願人)は、「のむシリカ」を標準文字で表してなる本願商標について、32類「シリカを含有する飲料水」を指定商品として登録出願をしたが商標法3条1項3号該当理由に拒絶査定を受けたため、拒絶査定不服審判(2022-6216)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。審決では、3条2項適用も否定した。

判 旨
 (商標法3条1項3号について) 本願商標は、「のむシリカ」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「のむ」の文字は、「口に入れて噛まずに食道の方に送る。喉に流し入れる。」の意味を有する「飲む」の語に通じ、また、その構成中の「シリカ」の文字は、「二酸化ケイ素の通称」を意味する(広辞苑第7版。乙1、2)。本件審決の時点において、本願商標の指定商品に係る取引分野において、シリカは体に欠かせない成分として注目を集め、シリカを含有することをうたう飲料が広く流通し(乙3~12)、また、「飲むミネラル」、「飲むコラーゲン」、「飲む高濃度ビタミンC」、「飲むカルシウム」、「飲むヒアルロン酸」、「飲むセラミド」、「飲む乳酸菌」等、「飲む○○」と称する、経口で栄養成分などを摂取できる商品(飲料、サプリメントなど)が広く流通している実情もある(乙13~24)。 そうすると、本願商標は、これを指定商品「シリカを含有する飲料水」に使用するときは、需要者及び取引者に、「飲むことができる(経口摂取することができる)シリカ」程度の意味を認識させるものであって、単に商品の品質 (摂取方法、成分)を表示するにすぎないものといえる。
 (商標法3条2項について)本願商標は、原告に係るブランド名として、その指定商品に係る一般需要者の間において、広く知られるに至っていると認めることはできず、原告により使用された結果、何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものになったとはいえないから、商標法3条2項の要件を具備しない。

コメント
 本件においては、商標法3条1項3号該当性と3条2項適用性が争われ前者は肯定されたが、後者は否定されて、審決が支持されたものである。
本願商標は「のむシリカ」で、指定商品は「シリカを含有する飲料水」であり、品質(摂取方法、成分)表示とされた。被告(特許庁長官)提出の乙号証が採用されているが、本願商標は記述的でさえある。