2025-07-28

工藤莞司の注目裁判:出願商標「ダイレクトマーケティングエージェンシー」は3条1項3号及び4条1項16号に該当するとされた事例

(令和7年6月25日 知財高裁令和7年(行ケ)第10004号 「ダイレクトマーケティングエージェンシ ー」審決取消事件)

事案の概要
 原告(審判請求人・出願人)は、「ダイレクトマーケティングエージェンシー」を標準文字で表した本願商標について、35類「広告業、トレーディングスタンプの発行、経営の診断又は経営に関する助言、事業の管理、市場調査又は分析等」及び42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計等」を指定役務として登録出願をしたが商標法3条1項3号及び4条1項16号該当を理由に拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2023-14150)を請求した処、 特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し審決の取消しを求めて提訴した事案である。

判 旨
 前記(3)によると、「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の語は、「カタロ グ・ダイレクトメール・雑誌・テレビ・電話など各種のメディアを通じて、消費者に直接商品情報を提供する販売促進方法」の意味を有する成語「ダイレクト マーケティング」と、「代理店」との意味を有する「エージェンシー」との語を組み合わせた語である。また、前記(4)によると、本件審決時、本願商標の指定役務に係る取引業界において、「ダイレクトマーケティング」の語は、事業者の業務内容を表示するために広く用いられており、一般の商取引において、「エージェンシー」の語は、「〇〇エージェンシー」との表記で、特定の業務を行う代理店を表示するために用いられている。さらに、「ダイレクトマーケティングエージェンシー」と称して、「ダイレクトマーケティング」業務を行う事業者も多数存在している実情がある。このような本願商標の構成文字の語義及び指定役務に関する取引の実情を踏まえると、本願商標「ダイレクトマーケティングエージェンシー」は、「カタログ・ダイレクトメール・雑誌・テレビ・電話など各種のメディアを通じて、消費者に直接商品情報を提供する販売促進方法を業務とする又はそれに特化した代理店」といった意味合いを容易に認識、理解させるものといえる。そうすると、本願商標は、その指定役務との関係で、役務の質(業務内容、業種)を表示記述するものであり、本願商標が指定役務に使用された場合に、その取引者及び需要者によって、将来を含め、役務の質(業務内容、業種)を表示したものと一般に認識されるものといえる。そして、本願商標は、「ダイレクトマーケティングエージェンシー」を標準文字で表してなるものであり、特別に識別力を獲得するための他の要素が加えられていない。以上を総合すると、本願商標は、本件審決時において、その指定役務につき、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、また、「ダイレクトマーケティング」業務とは関連しない役務については、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあると認められるため、本願商標は、3条1項3号及び4条1項16号に該当する。

コメント
 本件事案については、知財高裁も、3条1項3号及び4条1項16号該当と認定、判断して、審決を維持したものである。そして、既に「ダイレクトマーケティング」「エージェンシー」はそれぞれ取引界において使用されていると認定された。これは、被告(特許庁長官)提出の証拠に依っている。この程度の英語であれば、現に取引界に使用されて、また取引者・需要者の認識も進んでいることは確かであろう。原告は登録例を挙げたが、知財高裁は一蹴している。当該審決時での認定、判断である。