2025-07-07

工藤莞司の注目裁判:団体内部間の商標登録問題は私的領域のもので商標法4条1項7号に該当しないとされた事例

(令和7年5月29日 知財高裁令和7年(行ケ)第10006号「JMAC」事件)

事案の概要
 原告(審判請求人)は、被告(審判被請求人・商標権者)が有する「JMAC」を標準文字で表してなる本件商標(登録第6573769号)、指定商品28類「ミニチュアカー、おもちゃ、人形」について、商標法4条1項7号違反を理由として無効審判(2023-890077)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し審決の取消しを求めて提訴した事案である。

判 旨
 商標法4条1項7号については、公序良俗に反する商標の登録を阻止するためのものであり、典型的には、商標を構成する標章自体が公序良俗に反する場合に、登録商標による保護を与えないことを趣旨とするものである。商標登録につき先願主義(同法8条1項)を採用する我が国の法制度の下では、私的紛争の範囲内において、一方の利害関係人が先に出願し登録を得たとしても、当然には同法4条1項7号には該当しないものと解される。
 本件出願時に原告が本件団体の会長の、被告が関西支部長の地位にあったことは客観的事実であり、本件の実体は、原告と被告の間の本件団体の在り方を巡る見解の対立等から派生した問題とみられ、原告自ら速やかに商標登録出願を行うことを妨げるべき事実も認められない。本件団体の会員が近時100人前後であることに鑑みれば、本件商標の出願・登録が、当事者間の私的領域の問題を超えて公序良俗に関わることになるとはいえず、本件商標が商標法4条1項7号に該当するとは認められない。(編注 同旨 同日判決 令和7年(行ケ)第10007号事件、令和7年(行ケ)第10008号事件)

コメント
 本件事案は、小さな任意団体の中で、当該団体に関する商標を先取りした者と現会長間の争いで、買い取りを請求したわけでも権利行使をしたわけでもない事案である。従って、知財高裁も商標法4条1項7号の公序良俗違反には当たらないとして斥けたのは、審決と同様である。仮に、高額での買い取り請求や権利行使をしたのであれば、4条1項19号違反を検討する余地が生ずるかもしれない。