(令和7年5月29日 知財高裁令和6年(行ケ)第10110号 「スカイランタン」事件)
事案の概要
原告(被請求人・商標権者)は、同人が有する本件商標「スカイランタン」(標準文字・登録第6633183号)、11類「電球類及び照明用器具、LED照明用器具、クリスマスツリー用電気式ランプ、ろうそく式ランタン、電気式ランタン、LED式ランタン、祭りの飾り用飾りランプ、祭りの飾り用ひも状のライト、あんどん、ちょうちん」について、被告(請求人)が登録無効審判(2023-890071)を請求した処、特許庁は成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。審決は、本件商標は商標法3条1項3号、6号に該当すると判断したものである。
判 旨
証拠及び弁論の全趣旨によれば、「スカイランタン」の語は、本件商標の査定日において、本件商品(底面に開口部があり、中に明かりがともされた薄い膜でできた略円筒形の袋状のものであって、これを夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむイベント用品といえるもの)、又はこれと同種の商品であって、夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむための商品の一般名称であったと認められる。本件商標の指定商品のうち、「電球類及び照明用器具、LED照明用器具、ろうそく式ランタン、電気式ランタン、LED式ランタン、あんどん、ちょうちん」については、主として照明を目的とした商品と認められ、本件商品等のように、照明の効果を利用した飾り等としても用いることが可能なものである。他方、「スカイランタン」を一般名称とする本件商品等は、その形状から「一種のちょうちん」(証拠略)、「灯籠」(証拠略)、「行灯(あんどん)」(証拠略)、「ランタン(中国風ちょうちん)」(証拠略)と説明されることもあり、実際にそのような商品の性質も有している。そうすると、本件商標が前記指定商品について使用された場合、その取引者又は需要者において、その商品の品質、用途、形状を表示したものと一般的に認識されるものと認められる。また、本件商標の指定商品のうち、「クリスマスツリー用電気式ランプ、祭りの飾り用飾りランプ、祭りの飾り用ひも状のライト」についても、照明の効果を利用した飾りとして用いることを目的とした商品である点では共通する性質がある。そして、本件商品等は、前記のとおり夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむことを用途とする商品であるが、固定するなどして飾りとして用いる照明等としても利用されることがある。例えば、本件商品等をひもを付けて浮かばせ、「スカイランタン」「スカイランタンイベント」「スカイランタンナイト」等と表示している例も多くあるほか(証拠略)、・・・夜空に大きなクリスマスツリーを創り出す例(証拠略)もある。これらの点を踏まえると、本件商標が前記指定商品について使用された場合、その取引者又は需要者において、その商品の品質、用途、形状を表示したものと一般的に認識されるものと認められる。そうすると、本件商標は、本件商品等の一般的名称として定着している「スカイランタン」を標準文字で表したものであって、これを本件商標の指定商品について使用したときは、その商品の品質、用途、形状を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に当たるということができる。したがって、本件商標は、商標法3条1項3号に該当する。
コメント
知財高裁は、本件商標は、指定商品の品質、用途、形状の表示であるとして商標法3条1項3号に該当すると判断したものである。その前に「スカイランタン」の語は、底面に開口部があり、中に明かりがともされた薄い膜でできた略円筒形の袋状のものであって、これを夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむイベント用品といえるもの、又はこれと同種の商品であって、夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむための商品の一般名称と認められるとした上で、これを本件指定商品について当てはめたものである。認定、判断は妥当であるが、一般名称でなくとも、指定商品の品質、用途、形状の表示であれば商標法3条1項3号該当である。