2025-08-08

日本:東京地裁における「マーク・ゴンザレス」商標訴訟でSHIFFONが勝訴

米国のスケートブランド「Mark Gonzales(マーク・ゴンザレス)」を日本で展開する株式会社SHIFFON(以下、「SHIFFON社」)が、サクラインターナショナル株式会社(以下「サクラインターナショナル社」)らに対し提起した、マーク・ゴンザレス氏の氏名や、同氏の代表作である「エンジェル」イラストの商標権等に関する訴訟(東京地方裁判所令和5年(ワ)第70127号債務不存在確認等請求事件)において、東京地裁は2025年7月25日に原告であるSHIFFON社の主張を全面的に認める判決(以下「本判決」)を下した。

訴訟における争点は以下の通り;
①サクラインターナショナル社は、SHIFFON社が「エンジェル」や「Mark Gonzales」等の商標(本標章※1)を使用した場合に、SHIFFON社に対し、サクラインターナショナル社が保有している登録商標(本商標※2)の商標権を行使することができるか
②サクラインターナショナル社は、「エンジェル」のイラスト(本アートワーク※3)の著作権を有しているか

本判決の主な内容は以下の通り;
* サクラインターナショナル社が、マーク・ゴンザレス氏のブランド管理会社であるTULUMIZE inc.から許諾を受けているSHIFFON社に対し、本商標の商標権を行使することは権利濫用に該当し認められない
* 同様に、SHIFFON社から本標章の許諾を受けた者に対する商標権行使も認められない
* サクラインターナショナル社は本アートワークの著作権を有していないから、本アートワークの著作権を行使することはできない

本商標については、本判決に先立つ、マーク・ゴンザレス氏とサクラインターナショナル社の訴訟に関する判決において、サクラインターナショナル社が、マーク・ゴンザレス氏に対し返還する義務を負うことが明らかにされている(東京地方裁判所令和3年(ワ)第32244号損害賠償等請求本訴事件・令和6年(ワ)第70389号商標権移転登録請求反訴事件に関する判決。現在控訴審係属中、2025年9月29日に判決言渡し予定。)。

本商標の返還が実現するまでの間、形式的にはサクラインターナショナル社が商標権者となるが、本判決は、サクラインターナショナル社が、商標権を保有していたとしても、SHIFFON社や取引先各位に対して損害賠償請求や差止請求をすることができないとの判断を示すものであり、サクラインターナショナル社が本商標の商標権や本アートワークの著作権を根拠として、SHIFFON社の「Mark Gonzales」ブランドの展開を妨げることはできないことを明確にした点で非常に大きな意義がある。

また、サクラインターナショナル社が主張したエンジェルに関する著作権がサクラインターナショナル社に帰属している等も、本判決で明確に否定された。 
さらに、本判決では、サクラインターナショナル社が、SHIFFON社の取引先に対し警告書を送付し、SHIFFON社が本アートワーク及び本標章の使用について許諾する権限を有していないと指摘したことが「虚偽の告知」に当たるとして、損害賠償義務を負うとの判断も示された。
なお、本判決は現時点では確定していない。

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