(令和7年7月24日 知財高裁令和7年(行ケ)第10025号 「沖縄コレクション」審決取消請求事件)
事案の概要
原告(審判請求人・出願人)は、本願商標「沖縄コレクション」(標準文字)について、登録出願をしたが拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2023-12066)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。拒絶理由は商標法3条1項3号該当で、指定役務は35類 広告業、商品の販売に関する情報の提供、消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供等、41類 電子出版物の提供、写真の撮影、興行の企画・運営又は開催等である。
判 旨
本願商標を構成する「コレクション」は、一般に「有名デザイナーなどの発表する、そのシーズンの一連の新作の発表会」を意味するものとして使用される語であって、これと代表的な開催地の地名を結び付けた「パリコレクション」などの語は、その地で開催されるファッションウィークの日本国内における呼び名として、ファッションに関係する役務の取引者、需要者に広く知られていると認められる。加えて、本願商標の指定役務に係る商品展示会等又は興行の開催等に含まれる、ファッションショーやファッションショーを模した企画を含むイベントについては、開催地の地名に続けて「コレクション」を組み合わせた名称が広く用いられており、新聞等においても、これらのファッションショーやイベントが当該名称とともに報道されている。このような本願商標の構成文字の語義及び本願の指定役務に関する取引の実情を踏まえると、本願商標「沖縄コレクション」は、その指定役務に含まれるファッションショーや、ファッションショーの要素を伴うイベントの企画、運営、開催について使用された場合、本願商標の指定役務商品展示会等又は興行の開催等の取引者、需要者に、「沖縄で開催される、ファッションショー又はファッションショーを模した企画を含むイベント」という、役務の提供の場所及び役務の質(内容)を表示記述すると一般に認識されると認められる。このような本願商標は、ファッションショーや、ファッションショーの要素を伴うイベントの企画、運営、開催に係る役務の取引に際し、役務の特徴(特に提供の場所及び役務の内容)を表すための必要適切な表示として、何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、多くの場合自他役務識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることが明らかである。そうすると、「沖縄コレクション」を標準文字で表した本願商標は、少なくともその指定役務に含まれるファッションショーや、ファッションショーの要素を伴うイベントに係る役務につき、当該役務の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項3号に該当する。
コメント
本願商標「沖縄コレクション」については、商標法3条1項3号該当性が争われて、知財高裁もこれを認めて、審決を支持したものである。その理由中、役務の特徴(特に提供の場所及び役務の内容)を表すための必要な表示として、何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占は不適である旨は説得力のある商標の例で、知られた地名+コレクションには妥当しよう。もちろん、役務の内容表示であることには変わりがない。原告の指定役務の一部には拒絶理由は妥当しない旨の指摘に対しては、判決は、分割出願や補正がない限りは、出願全体として該当すると言及した。