(令和7年10月20日 知財高裁令和7年(行ケ)第10032号(A事件成立審決)、第10034号(B事件不成立審決)、第10035号(C事件不成立審決)「池麺」不使用取消事件)
事案と判決の結論
A事件は、登録商標「池麺」(標準文字 登録第5716665号)指定役務 43類「宿泊施設の提供、飲食物の提供」に係る不使用取消審判(2023-300005)不成立審決の取消訴訟で、知財高裁は被告の使用を否定し、審決を取り消した。
B事件は、登録商標「いけめん」(標準文字 登録第4741943号)指定役務 43類「うどんその他の飲食物の提供、うどんを含む飲食物のケータリング、うどん屋その他の飲食店等」に係る不使用取消審判(2023-300003)成立審決の取消訴訟で、知財高裁は原告の使用を否定し、審決を維持した。
C事件は 登録商標「池麺」(標準文字 登録番号 第5710894号)30類「菓子及びパン、みそ、ウースターソース、グレービーソース、ケチャッ プソース、しょうゆ、食酢、酢の素、そばつゆ等」に係る不使用取消審判(2023-300004)成立審決の取消訴訟で、知財高裁は原告の使用を否定し、審決を維持した
判旨
A事件 被告が主張する本件店舗内における本件麺箱の積み上げ行為は、既に閉店した旧店舗において利用され、同店舗名が記載された本件麺箱が、異なる店名である本件店舗において利用され、本件店舗の隅に一時的に積み上げられていたということのみにとどまるものである。したがって、被告が主張する本件店舗内における本件麺箱の積み上げ行為は、その態様等に照らし、本件A事件請求に係る役務につき、法2条3項5号にいう「役務の提供の用に供する物に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為」に該当するとは認められない。上記フェイスブック及びXの投稿記事は、既に閉店した旧店舗の営業に関する記事であり、上記アメブロの投稿記事は、本件A事件要証期間内の販売の事実が認められない本件カップ麺に関する記事であるから、これらの記事がその後もインターネット上に残存し、本件A事件要証期間内に閲覧可能であっても、これが、本件A事件請求に係る役務に関し、法2条3項8号にいう「役務に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当すると認めることはできない。以上によると、被告が主張する、本件店舗内における本件麺箱の積み上げ行為、本件カップ麺のニュースリリース及びフェイスブック等の投稿記事の存在をもっては、いずれも、法2条3項5号及び8号にいう「使用」には該当しない。そして、これまで判示したところからすると、これらの行為及び投稿記事につき、本件A事件請求に係る役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されているとも認められないから、法50条1項にいう「登録商標の使用」に該当するとも認められない。
B事件(C事件同旨)被告は、本件商標Bについて、本件店舗内における本件麺箱の積み上げ行為が法2条3項5号に該当し、また、本件店舗内における本件麺箱の積み上げ行為、本件カップ麺のニュースリリース及びフェイスブック等の投稿記事の存在をもって、法2条3項8号に該当すると主張する。しかし被告が主張する本件商標Bの使用態様及び本件B事件要証期間はA事件と同一であり、本件B事件請求に係る役務も本件A事件請求に係る役務と同様の飲食物の提供等に関するものである。そうすると、前記2における判示(編注判旨A事件参照)と同様の理由により、被告が、本件B事件要証期間内において、本件B事件請求に係る役務について、本件商標Bを使用していることを証明したと認めることはできない。
コメント
本件判決は、審決取消訴訟の併合事件のものであるが、商標権者(A事件被告、BC事件原告)側の使用行為が共通している。本件店舗内における旧店舗名記載の麺箱の積み上げ行為又は本件カップ麺のニュースリリース及びフェイスブック等の投稿記事の存在が商標権者側の使用に該当するかが争われたが、知財高裁はいずれも否定した。旧店舗名が記載された本件麺箱が、異なる店名である本件店舗で利用され本件店舗の隅に一時的に積み上げられていたことにとどまるとして、また前掲記事がその後もインターネット上に残存し、本件A事件要証期間内に閲覧可能であっても、使用には当たらないとした。これらは、また商標権者に係る役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別する態様とも認められないと念を押した。
