2025-12-26

工藤莞司の注目裁判:商品形態の実質的同一性が否定された事例

(令和7年11月13日 大阪地裁令和6年(ワ)第10842号 「ミニトートバッグ等形態」不正競争行為事件)

事案の概要
 本件は、原告商品1(ミニトートバッグ・下図左参照)及び原告商品2(ミニ財布)を販売する原告が、被告商品1(下図右参照)が原告商品1の形態を、被告商品2が原告商品2の形態をそれぞれ模倣した商品であり、被告による被告各商品の販売が不正競争(不競法2条1項3号)に当たると主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償等の支払を求めた事案である。

判旨1 原告商品1と被告商品1は、ハンドルの持ち手高(形態オ)に8センチメートルであるか10.5センチメートルであるかという違いがある上、バッグ前面の縦約3センチメートルの長方形タグの有無(同ク)、ハンドルと本体との取付部の約4センチメートル四方の縫い目の形状及び丸型補強鋲の有無(同ケ)においても相違する。この点、原告は、上記相違点は些細なものであると主張する。しかし、ハンドル本体との取付部の縫い目の形状、同部の補強鋲の有無や、バッグ前面の長方形タグの有無という相違点については、バッグ前面の形態が需要者の最も注目する部分であると解されること、上記縫い目の大きさ(約4センチメートル四方)や長方形タグ(縦約3センチメートル)がバッグ全体の大きさに比して小さいものとはいえないことからすれば、先行する同種商品との比較のもと原告商品1固有の形態といえる部分が限られている中で、商品全体の形態に対する需要者の印象に影響する相違点があるといえる。また、ハンドルの持ち手高が数センチメートル相違する点については、需要者において、これのみで大きく印象を異にするとまでいえるかはともかくとして、上記のように原告商品1固有の形態といえる部分が限られている中で、相違点として軽視することはできない。以上より、原告商品1と被告商品1の形態は、実質的に同一(不競法2条5項)であると認めることはできない。                                   

判旨2 原告商品2と被告商品2は、外部面の凹凸や模様の有無において相違する。この点、原告は、上記相違点を認めつつも、原告商品2の外側の素材を被告商品2の外側の素材とすることは容易に着想できるものであるから、両形態は実質的に同一であるなどと主張する。しかし、原告商品2の外側の素材は「本革」であり、被告商品2の外側の素材は「合成皮革(PU)」であるから、素材による「光沢及び質感」(不競法2条4項)が異なることに加え、凹凸や模様が一切施されていない原告商品2とは異なり、被告商品2には凹凸のある網目様の模様が施されており、「商品の外部の形状」(同条項)においても相違している。そして、これら形態は、財布の需要者にとって強く関心を有する部分といえることからすれば、先行する同種商品との比較のもと原告商品2固有の形態といえる部分が限られている中で、上記相違点は、商品全体の形態に対する需要者の印象に影響するものといえる。以上より、原告商品2と被告商品2の形態は、実質的に同一(不競法2条5項)であると認めることはできない。

コメント
 本件事案は、不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣行為に係る争いだが、原告の請求が棄却されたものである。模倣については、先行商品形態に依拠した実質的同一性が必要である(2条5項)。商品1(ミニトートバッグ)については、ハンドル本体との取付部の縫い目の形状、同部の補強鋲の有無等、商品2(ミニ財布)にいてはバッグ前面の長方形タグの有無、凹凸のある網目様の模様において相違するとされた。妥当な判断であろう。