(令和7年10月20日 知財高裁令和7年(行ケ)第10036号「STARBOSS」事件)
事案の概要
被告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標「STARBOSS」(標準文字 登録第6595964号)、32類「ビール、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、ビール製造用ホップエキス、乳清飲料」について、原告(審判請求人)は、商標法4条1項11号、15号に該当するとして登録無効審判(2023-890037)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて提訴した事案である。引用商標1-3は登録商標「STARBUCKS」(登録第2200242号他)、指定商品30類32類33類他及び引用商標4は「コーヒー等の-提供の役務」に使用する商標「STARBUCKS」である。
判 旨
両者は、語頭の「STARB」及び語尾の「S」の各文字において共通するもの の、その間の「OS」、「UCK」の文字において異なっており、欧文字8文字又は9文字といった比較的短い構成にあっては、その差異は明確であるから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。両者は、語頭の「スター」と語尾の「ス」の各音において共通するが、その間の「ボ」、「バック」の音において異なり、比較的短い音数にあって音節数も異なっているから、両者の称呼は、全体の音感において異なっており、明瞭に聴別し得るものである。本件商標を構成する「STARBOSS」の文字は、一種の造語といえるものであって、特定の観念を生じない。引用商標1~3を構成する「STARBUCKS」の文字は、一種の造語といえるものであるが、前記のとおり、引用商標1~3が、原告の業務に係る原告役務のみならず、原告の業務に係るコーヒー、茶、清涼飲料及び果実飲料等の飲料商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認められることから、引用商標1~3からは「コーヒーチェーンであるスターバックス」の観念が生じる。そうすると、両者から生じる観念は明確に区別することができる。以上のとおり、本件商標と引用商標1~3とは、その外観、称呼、観念においていずれも相違し、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
前記1のとおり、本件各引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係るコーヒー等の提供(原告役務)の提供のみならず、原告の業務に係るコーヒー、茶、清涼飲料及び果実飲料等の飲料商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認められること、本件商標の指定商品と原告の業務に係る商品及び役務との関連性が認められ、取引者、需要者も共通すると認められること、我が国を訪問する外国人が増加し、日本在留外国人が多数に上っていること、その他原告が主張する種々の事実関係を考慮したとしても、本件商標をその指定商品に使用すると、当該商品が、原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるということはできない。
コメント
本件事案は、本件商標「STARBOSS」対引用商標「STARBUCKS」に係る4条1項11号又は同15号該当を理由とする無効審判不成立審決の取消訴訟で、知財高裁で審決が維持されたものである。引用商標の周知著名性は認められたが、両商標の明らかな非類似を前提として、広義の混同も否定された。
