2026-01-19

工藤莞司の注目裁判:不正競争防止法2条1項1号に基づく標章の使用差止め請求が認められた事例

(令和7年11月26日 東京地裁令和5年(ワ)第70731号 「Orbic」事件)

事案の概要
 本件は、原告が被告に対し、被告による被告標章「Orbic」他の使用が、原告の商品等表示「オービック」に係る不正競争防止法(「不競法」)2条1項1号又は2号に当たるとして、被告標章の使用の差止め及び廃棄、被告による「Japan Orbic合同会社」との被告商号の使用が、原告の商品等表示に係る不正競争(2条1項1号又は2号)に当たるとして、被告商号の使用の差止め及び抹消登記手続等を求めた事案である(商標権に基づく請求もなされたが、不競法各号に基づく請求等の関係では選択的併合)。

判 旨
(著名又は周知の商品等表示か) 認定のような原告の経営状況、宣伝広告の回数、その内容等に照らせば、原告は、基幹業務システム及びソフトウェアに関連する事業を広く展開する会社として全国的にその社名を広く認識されていたと認められ、原告が、広告宣伝等において「オービック」を継続的に使用していたことも併せ考えると、原告の社名(商号)から株式会社の部分のみを省略した原告表示についても、承継前被告が設立令和4年9月よりも前に、全国の需要者の間で広く認識されるに至っていたと認められる。                                            被告標章との類否 (ア)原告表示と被告標章1及び2を対比すると、いずれも「オービック」という同一の称呼を生じるものであり、また、いずれも観念が生じない点で共通する。被告標章1及び2につき「オルビック」という称呼を生じ得るとしても、「オ」、「ビック」は共通であって、その違いは、「オ」の次に「ル」が付くかどうかにすぎないから、この場合の称呼も類似する。そして、携帯情報端末や周辺機器、ソフトウェアの需要者において、「Orbic」を含む被告標章1及び2に接した場合に、アルファベットとカタカナという違いがあったとしても、同一又は類似の称呼を有する原告表示を連想することは十分に考えられるから、被告標章1及び2は、いずれも原告表示に類似すると認められる。(イ) 被告標章3ないし11は、①「Orbic」文字と、それに続く「TAB8」・・・「Orbic」以外の部分は、「タブレット」の略語「TAB」と型番を思わせる数字やいずれも商品又は役務の内容、性質等を記述的に記載したものというべきであるから、「Orbic」の部分がより強い印象を与えるものと認められる。そして、原告表示と被告標章3ないし11を対比すると、両者は被告標章3ないし11の冒頭の「Orbic」の部分において称呼が同一又は類似であり、観念が生じない点で共通することは前記(ア)のとおりであるから、被告標章3ないし11の末尾に付加部分があるとしても、共通点から生じる印象の強さが相違点から生じる印象の強さを上回り、需要者又は取引者 において、両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるというべきである。したがって、被告標章3ないし11は、いずれも原告表示に類似すると認められる。
(混同のおそれ)原告の提供する基幹業務システム及びソフトウェアは、インターネットを経由してスマートフォンやタブレット型携帯情報端末からも利用可能であるから、原告の営業の内容と被告商品等とは技術的及び経済的な関連性が認められる。そして、原告表示が、基幹業務システム及びソフトウェアを利用する企業等の関係者にとどまらず、一般の消費者の間で広く認識されていたことは前記のとおりである。以上によれば、原告表示と類似する被告標章を被告商品等の商品等及び広告等に付せば、需要者又は取引者において、被告商品等の販売・提供の主体が原告や原告と緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存する者であると誤信するおそれがあるといえる

コメント
 本件事案は、不正競争防止法2条1項1号該当性が争われて、原告表示の周知性、原告表示と被告標章の類似性及び広義の混同のおそれも認められ、原告の営業上の利益を侵害されるおそれがあるとして、原告の請求が認容された事例である。同旨で、被告商号の使用の差止め及び抹消登記手続請求も認められた。しかし、原告請求中、「ORBIC」又は「Orbic」の文字を含む現に使用されていない標章及び商号の使用の差止請求は、特定できないとして棄却された。本件事案では、原告は損害賠償の請求をしていない。最近2条1項1号事案は殆どなく、しかもその中で、認容例は稀である。

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 本件事案は、不正競争防止法2条1項1号該当性が争われて、原告表示の周知性、原告表示と被告標章の類似性及び広義の混同のおそれも認められ、原告の営業上の利益を侵害されるおそれがあるとして、原告の請求が認容された事例である。同旨で、被告商号の使用の差止め及び抹消登記手続請求も認められた。しかし、原告請求中、「ORBIC」又は「Orbic」の文字を含む現に使用されていない標章及び商号の使用の差止請求は、特定できないとして棄却された。本件事案では、原告は損害賠償の請求をしていない。最近2条1項1号事案は殆どなく、しかもその中で、認容例は稀である。