2026-01-09

工藤莞司の注目裁判:出願商標について要部観察により引用商標とは類似と判断がされた事例

(令和7年11月19日 知財高裁令和7年(行ケ)第10068号「新世界ジーンズ」事件)

事案の概要
 原告(審判請求人・出願人)は指定商品を25類「ジーンズ製被服」とする本願商標「新世界ジーンズ 」(標準文字)について登録出願をしたが拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2024-4185)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて提訴した事案である。拒絶理由は商標法4条1項11号該当で、引用商標は25類「被服、履物」を指定商品とする商標「新世界」(登録第3097634号)である。

判 旨
 本願商標は、その構成中「新世界」が、その指定商品に係る取引者、需要者に対して、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているもので はないから、その構成中の前半に位置する「新世界」を要部として抽出し、それと引用商標とを比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。したがって、本願商標は、その要部「新世界」部分に相応して、「シンセカイ」の称呼を生じ、「新しい世界」ほどの観念を生じるということができる。引用商標は、やや図案化されているものの、普通に用いられる域を脱しない書体で表された「新世界」を書してなるものであるから、その構成文字に相応して「シンセカイ」の称呼を生じ、「新しい世界」ほどの観念を生じるということができる。本願商標と引用商標は、その全体の外観構成において相違しており、構成全体としては書体の微差や語尾の「ジーンズ」部分の有無という差異はあるものの、要部において「新世界」の文字を表してなる点で共通するから、記憶に残る印象において似通ったものとなり、相紛らわしく、近似した 印象を与える。次に、称呼においては、本願商標は、その全体から「シンセカイジーンズ」と称呼される場合もあると解されるが、その要部「新世界」の文字から「シンセカイ」の称呼を生じる場合も多く、引用商標が「新世界」の文字より「シンセカイ」の称呼を生じることから、両者は、「シンセカイ」の称呼を共通にするものである。そして、観念においては、本願商標の要部と引用商標はいずれも「新しい世界」ほどの観念を生じるから、両者は、観念においても共通する。以上からすると、本願商標と引用商標は、その要部について、外観において相紛らわしく、近似した印象を与え、「シンセカイ」の称呼及び「新しい世界」ほどの観念を共通にするものであるから、外観、観念、称呼等によって 取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、 両者は、相紛れるおそれのある類似の商標ということができる。

コメント
 本件事案では、本願商標について要部観察により、本願商標と引用商標とは類似の商標とされた事例である。本願商標は、その指定商品「ジーンズ製被服」からも理解されるように、要部は「新世界」であることは明らかな商標の例である。引用商標の存在は、事前調査で容易に判明する範囲のものである。