2026-01-06

工藤莞司の注目裁判:商標法3条1項2号等以下の無効事由に該当しないとして審決が支持された事例

(令和7年11月13日 知財高裁令和7年(行ケ)第10042号 「開運祈願用道具」立体商標事件)

事案の概要
 被告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標(審決による登録第6118205号右掲図は一部)について、原告(審判請求人)が登録無効審判(2023-890045)の請求をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して本件審決の取消しを求めて提訴した事案である。本件商標は、21類「気学・遁甲術の方位学を用いて導かれた所定の場所に埋めることを目的とした開運祈願用道具〔収納箱・お守り札・麻紐・布・金粉・球体を一組とした道具セット〕で所定の場所に埋められるもの」及び45類「…開運祈願用道具を用いた開運方法に関する占いの指導・助言・相談並びにこれらに関する情報の提供」を指定する文字等と結合した立体商標である。争点は、商標法3条1項2号、3号、6号、4条1項7号、10号、15号、16号及び19号の該当性である。

判 旨
 本件商標における本件構成は、埋金法を行う場合に通常用いられていた一般的な構成であるとは認められず、本件商標に係る登録審決時において、本件商標が、埋金法に係る商品又は役務について、同業者間で一般的・慣用的に使用され、自他識別力を失う状況に至っていたと認めることもできない。したがって、本件商標を3条1項2号の慣用商標と認めることはできない。本件商標は、収納箱の立体的形状と自他識別力を有する図形及び文字との組合せからなる商標であり、指定商品又は指定役務の特徴(埋金法に係る商品の品質、用途、提供する役務の質、役務の用に供する物)を普通に用いられる方法で表示する標章「のみ」からなる商標に該当しないというべきである。よって、本件商標は、3条1項3号に該当しない。前記のとおり、埋金セットとして販売される商品には、種々のものがあり、指定商品又は指定役務の分野において、本件構成が広く一般的に使用されていたとは認められないから、本件構成には自他識別力が認められるというべきである。・・・そうすると、本件商標は、登録審決時において、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」には該当しない。よって、本件商標は、3条1項6号に該当しない。本件商標は、埋金法に係る商品や役務のみを表示する標章であるということはできず、取引者、需要者が、本件構成から直接、そのような商品の品質又は役務の質を直接認識することもできないというべきである。そうすると、本件商標を指定商品又は指定役務に使用しても、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるということはできない。よって、本件商標は、4条1項16号に該当しない。前記原告による販売状況に照らすと、本件商標の出願時において、少なくとも、引用商標が原告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、同種商品の需要者の相当程度の割合に達する程度の層に認識されているに至っていたと認定するに足りる立証はないといわざるを得ない。そうすると、原告の引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録審決時、本件商標の指定商品及び指定役務の分野において、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。よって、本件商標は、4条1項10号に該当しない。本件出願時及び登録審決時において、引用商標は、原告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であったとは認められない。したがって、引用商標と同じ本件構成を有する本件商標を被告が使用した場合に混同が生じ得る需要者の範囲は限られているから、4条1項15号の規定を適用して本件商標の登録を否定しなければならないほど、需要者の間で原告の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。よって、本件商標は、4条1項15号に該当しない。本件商標と引用商標は、いずれも専章堂の商品に由来する本件構成を有する同一の商標であるとしても、引用商標は、原告の商品又は役務を表示するとして、需要者の間に広く認識されている商標とまでは認められない。他方、被告について、不正の目的をもって本件商標を使用するとも認め難い。よって、本件商標は、4条1項19号に該当しない。被告において、本件商標の登録出願をしたことが不正な目的による出願ということはできない。その他、被告による本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するとして到底容認できないとする事情があることを認めるに足りる主張立証はない。よって、本件商標は、4条1項7号に該当しない。

コメント
 本件事案は、開運祈願用道具に係る立体商標について争われた特殊な取引界に関する事件である。判決は丁寧に認定、判断し七つの無効事由がすべてを否定して、審決が維持された。帯に長し・・・の感が否定できず、3条関係を無効事由とする一方、識別力の存在を前提とする4条1項10号等無効事由は整合しない。的を絞れないのであれば勝ち目は少ないと思われる。