2026-01-13

工藤莞司の注目裁判:外観と称呼は相違するが観念の同一性を凌駕するものではないとして類似と判断された事例

「令和7年11月17日 知財高裁令和6年(行ケ)第10104号 「COSME MUSEUM」事件」

両商標は外観、称呼上は相違するが観念の同一性を凌駕するものではないとして類似の商標と判断され、役務と商品も類似と判断された事例

事案の概要
 被告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標「COSME MUSEUM」(登録第6746429号)、指定役務は35類「・・・化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供・・・」について、原告(審判請求人・引用商標権者)は、本件無効審判(2024-890015)において、本件商標の登録は商標法4条1項11号に違反したものとして無効審判の請求をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて提訴した事案で、引用商標は「Cosmetic Museum」(標準文字 登録第6717335号)、指定商品3類「口臭用消臭剤、動物用防臭剤、せっけん類、歯磨き、入浴剤(医療用のものを除く。)、化粧品、香料、薫料、つけづめ、つけまつ毛」である。

判 旨
 本件商標と引用商標の類否 ⑴ 外観の比較 ・・・本件商標のうち後半の6文字の「MUSEUM」と引用商標の後半の6文字の「Museum」は、二文字目以降が大文字か小文字かの違いはあるものの、同じ文字である。これらの点を考慮すると、本件商標の外観と引用商標の外観との相違はそれほど大きくないものと認められる。 ⑵ 称呼の比較 本件商標全体から生じる称呼「コスメミュージアム」と、引用商標全体か ら生じる称呼「コスメチックミュージアム」又は「コスメティックミュージ アム」とは、構成音及び構成音数が異なる。しかし、いずれの称呼にも、初めに「コスメ」が、後に「ミュージアム」が含まれており、異なる部分は、中間の「チック」又は「ティック」の有無であって、語感が大きく異なることはなく、構成音数の相違も大きなものではない。そうすると、本件商標の称呼と引用商標の称呼との相違はそれほど大きくないものと認められる。⑶ 観念の比較 本件商標全体からも、引用商標全体からも、「化粧品の博物館」ほどの観念が生じるから、本件商標全体から生じる観念と、引用商標全体から生じる観念は同一である。 ⑷ 類否の判断 本件商標と引用商標は、各商標の全体から生じる外観及び称呼は、異なるものではあるが、いずれもその相違は大きいものではなく、観念は同一で、外観及び称呼の相違は、観念の同一性を凌駕するものではない。そうすると、時と所を異にして離隔的に観察した場合、本件商標と引用商標とは互いに紛れるおそれのある類似の商標であると認められる。
 そして、本件商標の指定役務に含まれる「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の「小売又は 卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の対象商品である「化粧品・歯磨き及びせっけん類」と、引用商標の指定商品に含まれる「せっけん 類、歯磨き」及び「化粧品」とは同一ないし類似するから、本件商標の指定役務は引用商標の指定商品と類似する役務である。

コメント
 本件事案については、知財高裁は、本件商標と引用商標は非類似とした審決を、両商標は類似と判断して審決を取り消した事例である。「COSME MUSEUM」と「Cosmetic Museum」との観念の同一は、外観、称呼の相違を凌駕し全体としては相紛れるおそれのある類似の商標と判断したものである。共に「化粧品の博物館」の観念を生ずると認定、判断している。そして、本件商標指定役務中の「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、引用商標の指定商品中「せっけん類、歯磨き」とは対象商品が同一を理由に、あっさりと互いに類似すると判断した点も注目される。