2026-01-15

工藤莞司の注目裁判:指定商品についての登録商標の使用が認められて審決が支持された事例

(令和7年11月26日 令和6年(行ケ)第10111号 「ZOOM」事件)

事案の概要
 原告(審判請求人)は、被告(審判被請求人・商標権者)の有する本件商標(右掲参照登録第4940899号)の指定商品中、9類「インターネット及びその他の通信ネットワークのユーザー間の通信用の電子計算機用プログラム」(「本件指定商品」)について、不使用による登録取消審判(2022-300478)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して審決の取消しを求めて提訴した事案である。

判 旨
 使用商品は、被告が販売するiPhone及びiPad用のアプリである。iPhone はスマートフォン、iPadはタブレット型コンピュータであって、いずれも電子計算機に含まれるから、iPhone及びiPad用のアプリである使用商品は、電子計算機用プログラムに当たる。そして、認定事実によれば、使用商品は、電子メールを送信するための機能を有していると認められ、電子メールは「インターネット及びその他の通信ネットワークのユーザー間の通信」の一種である。そうすると、使用商品は、「インターネット及びその他の通信ネットワークのユーザー間の通信用の電子計算機用プログラム」に該当すると認められる。以上によれば、App Storeプレビューのウェブページに、使用商標を付して、使用商品に関する情報を公開したことが、本件指定商品についての使用に該当するとの本件審決の判断に誤りがあるとは認められない。

 使用商標は、右掲図のとおりで、波形状の図形及びその右下の「PRO」の欧文字からなる部分(「波図形部分」)の下に、「ZOOM」の欧文字を、「OO」を図案化して横書きしてなる青色の文字(「文字部分」)を配してなるものである。使用商標のうちの文字部分と本件商標を比較すると、これらは、「ZOOM」 の欧文字を、「OO」を図案化して横書きしてなる文字からなり、それらの外観はほぼ同じであり、いずれも「ズーム」の称呼を生じ、「(カメラなどの) ズーム」の観念を生じると認められるから、外観、称呼、観念を通じてほぼ同一と認められる。そして、使用商標において、波図形部分と文字部分は、形態が大きく異なるとともに、両部分の間には空白部分があり、視覚的に独立した印象を与えるものである。これらを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。そうすると、登録商標と社会通念上同一と認められる商標(商標法50条、38条5項)に該当するかどうかに関しては、使用商標が使用される場合には、波図形部分が存在するものの、それとは独立した印象を与える文字部分が商標として使用されているとみることもでき、文字部分は、外観、称呼、観念を 通じて本件商標とほぼ同一であるから、本件商標が使用されていると評価することもでき、このような点を考慮すると、使用商標は本件商標と社会通念上同一であると認められる。

コメント
 本件事案では、取消しに係る指定商品についての登録商標の使用が認定されて、審決の認定、判断は正解とされたもので、指定商品電気計算機プログラムの解釈は正当である。登録商標と使用商標の同一性の認定、判断も同様である。