(令和7年12月17日 知財高裁令和7年(行ケ)第10070号 「エシカルグレーン」事件)
事案の概要
原告(審判請求人)は、被告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標「エシカルグレーン」(標準文字 登録第6765218号) 33類「清酒、日本酒、焼酎、泡盛、洋酒、ウイスキー、蒸留酒、ウォッ カ、ジン、ブランデー、ラム、リキュール、カクテル、スピリッツ、果実酒、 酎ハイ、中国酒、薬味酒」について、商標法3条1項3号に該当するとして登録無効審判(2024-890064)の請求をしたところ、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して、取消しを求めて提訴した事案である。
判 旨
本件審決は、その判断部分において、「エシカル」は「倫理的な」等の意味を有すると認定しているものの、その後の「エシカル」の使用例や、本件商標についての検討の場面では、「エシカル」の文字から「論理的な」の意味合いが生ずるとした上で、本件商標の構成全体から「論理的な穀物」ほどの漠然とした意味合いを生ずるなどと認定しており、本件商標の構成から生じる観念を正しく検討していないといわざるを得ない。この点について、被告は、本件審決中の「論理的」との記載は、「倫理的」と記載すべきところを「論理的」と誤って記載したことが明白であり、そのような誤記が数か所みられるとしても、本件審決の結論には影響しないと主張する。しかし、本件審決は、理由の核心部分といえる「当審の判断」部分において、辞書等に載録された意味を引き写す冒頭の部分を除き、全ての箇所において「論理的な」、「論理的に配慮された」又は「論理的な穀物」などと記載しているのであって、これらが審判官による単純な誤記であると即断することはできない。前記のとおり、ある商標がその指定商品について商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、当該商標が当該商品に使用された場合における取引者、需要者の一般的認識を検討すべきところ、本件審決は、その検討の前提となる構成から生じる意味を誤っているから、結局は商標法3条1項3号該当性判断の核心部分における検討を誤っているというほかなく、この誤りは結論に影響を及ぼすものというべきである。したがって、本件審決は、商標法3条1項3号該当性の判断に誤りがあって、この誤りは、審決の結論に影響を及ぼすものであるから、本件審決には取り消されるべき違法がある。
コメント
本件では、知財高裁が審決を取り消した事例であるが、その理由が本件商標より生ずる意味の認定に誤りがあり、結論に影響及ぼすとしながらも、そのことのみで取り消したものである。そうであれば、知財高裁が正しい意味合いを認定して、無効理由の存否を判断するのが筋で、普通のことである。ところが、本件では審決の認定の誤りを指摘したのみで取り消した。稀有な例であろうが、取り消し後の審決では、それらを踏まえて再審決することになる(商標法63条2項・特許法181条2項)。原告(日本洋酒酒造組合)は、「エシカルグレーン」は、「地球環境に配慮した持続可能な社会を実現するための取り組みを行うことを企業理念として掲げて生産・販売される穀物を原材料とするウイスキー」及びその原材料を意味すると主張した。
