(令和7年12月23日 知財高裁令和7年(ネ)第10068号 「2ch」侵害控訴事件 原審・東京地方裁判所令和6年(ワ)第70003号)
事案の概要
控訴人(原告・商標権者)は、「2ch」の標準文字からなる原告商標の商標権者である。被控訴人(被告)ロキ社は、インターネット上の電子掲示板「5ちゃんねる」(「ロキ社掲示板」)を運営する外国会社である。被控訴人ロキ社は、DNS(ドメインネームシステム)の転送機能の設定画面において、「2ch.net」との文字列(「被告標章」)を、ロキ社掲示板のウェブサイトに転送するためのドメイン名として入力した(「本件入力行為)。本件は、控訴人が、本件入力行為は商標法2条3項8号所定の標章の「使用」に該当し、被控訴人らは共同して原告商標の商標権を侵害したなどと主張して、損害賠償金及び金員の連帯支払を求めた事案である。原審は、被控訴人ロキ社が商標法2条3項8号所定の「使用」に該当する行為をしたとはいえないなどとして、控訴人の請求をいずれも棄却し、控訴人は、これを不服として控訴を提起した事案である。
判 旨
控訴人は、本件入力行為と本件作出行為(編注 被控訴人ロキ社は、ユーザーが、インターネットのアドレスバーに「2ch」と入力すると、「2」と「犬らしき動物」が出現し、当該動物が「2」を蹴り壊すと「5CH」と表示する映像が表示され、ユーザーをロキ社掲示板に自動転送する状況を作出)は、一連一体の行為として、商標法2条3項7号及び8号所定の「使用」に該当する旨の主張をする。しかしながら、控訴人の主張は、本件動画が原告商標(「2ch」)を表示するものであることをその前提とするところ、本件動画は、先ず、「2」と動物のキャラクターが表示され、当該キャラクターが「2」に近付き、これを蹴り壊すと、「2」に換わり「5」が表示され、さらに、「CH」との 記載のある小旗が表示される映像であり(証拠略)、外観、称呼(「ゴシー エイチ」又は「ゴチャンネル」)、観念(「2ではない5ちゃんねる(ロキ社掲示板)」)のいずれについても、原告商標(「2ch」)と同一であるとも類似するとも認めることはできない。 控訴人の主張は、その前提を欠くものといわざるを得ず、採用できない。
コメント
本件は、インターネット上の入力行為及び転送行為が商標法2条3項7号又は8号の使用行為に当たるか否かかが争われたが、否定された事例である。本判決は、行為途中の動画上から外観、称呼及び観念から判断している。それなら使用を超えて侵害の当否であろう。しかし、私見では、入力行為以降の一連の行為では、入力文字が標章として当該役務の出所を表示し自他役務を識別するとは考え難く、商標的使用か否かの観点からの解釈ではどうだろうか。それとも、現行規定が最新のインターネットの発達に追いついていないのであろうか。なお、知財高裁サイトには、原審判決は見付からないが、本件商標は、登録5843569号で、38類「電子掲示板による通信及びこれに関する情報の提供,インターネット利用のチャットルーム形式による電子掲示板通信及びこれに関する情報の提供」等と思われる。
