(令和7年12月17日 知財高裁令和7年(行ケ)第10072号 「あおば皮フ科クリニック」事件)

事案の概要
被告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標「あおば皮フ科クリニック」(標準文字登録6155848号) 44類 医業」の登録について、原告(審判請求人)は、登録無効審判(2024-890033)の請求をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して、取消しを求めて提訴した事案である。無効理由は商標法3条1項4号、6号、4条1項10号及び11号で、10号に係る引用標章は使用標章1「あおば皮膚科クリニック 」他9件、11号に係る引用商標1(「右図参照」登録 第5303913号)44類「医業・・・」及び引用商標2「横浜青葉デンタルクリニック」(標準文字 登録第6048599)44類「歯科医業・・・」である。
判 旨
本件商標(「あおば皮フ科クリニック」)は、全体として、ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるとは認められず、3条1項4号に該当するとは認められない。本件商標の構成中・・・「あおば」という文字部分とともに使われる場合は、「あおば」という名称を有する医療機関のうちで皮膚科の治療等を行う医療機関を指すことを意味し、その点で自他役務の識別機能に資するものと認められる。そうすると、本件商標は、全体として、自他役務の識別機能を有し、何人かの業務に係る役務であることを需要者に認識されるものと認められる。
使用標章1ないし10のいずれについて・・・本件商標の出願時及び査定時において、これらの標章がどの程度の数及び範囲の需要者に認識されていたのかを認定することができず、当該医療機関の存在する場所の周辺の住民に認識されているにとどまらず、医療機関の名称として需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。したがって、使用標章1ないし10のいずれについても、これが4条1項10号に当たるとは認められず、本件商標が同号に該当するとも認められない。
本件商標と引用商標1は、本件商標から生じる観念「『あおば皮フ科クリニック』という名称 の皮膚科を診療科目とする特定の医療機関」と、引用商標1から生じる観念『青葉こころのクリニック』という名称の心療内科又は精神科を診療科目とする特定の医療機関」及び「『AOBA MENTALCARE CLINIC』という名称の心療内科又は精神科を診療科目とする特定の医療機関」、葉又は樹木及び鳥、とは相違しており、類似しない。その外観、称呼及び観念のいずれについても類似せず、これらを総合して全体的に考察しても、これらの商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められない。したがって、本件商標と引用商標1は、類似の商標であるとは認められない。本件商標と引用商標2は、本件商標から生じる観念「『あおば皮フ科クリニック』という名称の皮膚科を診療科目とする特定の医療機関」と、引用商標2から生じる観念「横浜市内に存在する『横浜青葉デンタルクリニック』という名称の歯科を診療科目とする特定の医療機関」とは相違しており、類似しない。その外観、称呼及び観念のいずれについても類似せず、これらを総合して全体的に考察しても、これらの商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められない。したがって、本件商標と引用商標2は、類似の商標であるとは認められない。
コメント
本件事案は、登録無効不成立の審決の取消訴訟であるが、知財高裁でも、本件商標の登録には無効理由は認められず、棄却された事例である。4つの無効理由も争っているが、何れも否定された。可能ならば的を絞って争うべきであろう。審決には、原告は被告より侵害の警告を受けたとあり、それでの争いのようである。なお、侵害訴訟中でも、被告側は権利行使の制限として、無効理由の存在を抗弁することができる(商標法39条・特許法104条の3第1項)。
