(令和7年12月23日 知財高裁令和7年(行ケ)第10066号 「阿夫利」事件 同旨令和7年12月23日 知財高裁令和7年(行ケ)第10067号)
事案の概要
原告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標(「AFURI」及び「阿夫利」を上下二段に横書き 登録第6609896号)指定商品32類「ビール、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、ビール製造用ホップエキス、乳清飲料」及び33類「清酒、焼酎、合成清酒、白酒、直し、みりん、洋酒、果実酒、酎ハイ、中国酒、薬味酒」の登録について、被告は(審判請求人・引用商標権者)、商標法4条1項11号他該当を理由として登録無効審判(2023-890074)の請求をした処、特許庁は、指定商品中、32類「ビール」、33類「全指定商品」について登録無効との審決をしたため、原告は、本件審決のうち登録を無効とした部分の取消しを求めて提訴した事案である。引用商標は「阿夫利大山(縦書き)」(登録第4651814号 指定商品33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」で、争点は、両商標の類否である。
判 旨
本件商標に接する取引者・需要者のうち少なくとも一部の者は、「阿夫利山」ないし「大山」を想起すると解することができる。次に、引用商標から生ずる観念についてみると、引用商標は、「阿夫利大山」の文字が 一般の辞書等に掲載された用語であるとは認められない。しかし、証拠によれば、引用商標の構成中の「大山」の文字は、「神奈川県中部にある山」、「雨降山(あふりやま)」、「阿夫利山」を意味するものとして辞書に掲載されている用語であること、実際に、「阿夫利山」を意味するとして「大山」の用語が用いられている例があることが認められる。そうすると、引用商標の「阿夫利大山」については、・・・「阿夫利大山」全体として、神奈川県中部にある大山の異称である「阿夫利山」を観念として想起させるというのが相当である。以上認定の本件商標及び引用商標のそれぞれから想起される観念に照らすと、両者は一定程度の類似性を有するということができる。
引用商標については、上記のとおり、・・・「阿夫利」の部分が一般に採用されることが想定し難い文字列であるのに対し、「大山」の部分が平易な漢字であること、「大山」の語と他の語を組み合わせた商品名が無効対象指定商品に用いられた例が複数あること(証拠略)を考慮すると、引用商標のうち「大山」の部分が取引者・需要者の注意を強く引くとは考え難い。そうすると、両商標は、外観上、一定程度の類似性を有するといえる。
本件商標の構成のうち、強く支配的な印象を与える「阿夫利」の部分の称呼は「アフリ」であり、引用商標の称呼は「アフリオオヤマ」であるから、 両商標は全体の称呼において「オオヤマ」の音の有無で相違する。しかし、両商標は、語頭における称呼を共通にするものであり、この共通性は識別上、重要であると考えられるから、称呼においても一定程度の類似性を有するというのが相当である。
以上を踏まえると、本件商標と引用商標は、その構成中の「阿夫利」の文字について共通し、観念、外観及び称呼のいずれについても一定程度の類似性を有している。こうした点に加え、両商標の外観上の共通部分である「阿夫利」が一般に採用されることが想定し難い語であることを考えると、無効対象指定商品の需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考慮すれば、本件商標は引用商標と互いに紛れるおそれがある商標であると判断することが相当である。
コメント
知財高裁でも、本件商標と引用商標の類否が争われて、類似と判断されて審決が支持された事例である。観念、外観及び称呼のいずれも一定程度の類似性を有していると判断しながらも、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し全体的に考慮して類似と判断したものであるが、見かけない持って回った類似判断方法である。それなら、引用商標中「阿夫利」を支配的部分と認定して類似の判断に導くことは往き過ぎだろうか。
