(令和8年1月16日 東京地裁令和5年(ワ)第70505号 「ゴミサー」侵害事件)
事案の概要
本件は、原告が被告に対し、被告が業務用生ごみ処理機に被告標章「ゴミサー」を付して販売すること等により、原告の保有する商標権(「ゴミサー」標準文字 7類「生ゴミ処理機、液体肥料製造装置」登録第5769618号)が侵害されているとして、差止め及び廃棄を求めるとともに、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
判 旨
被告は、平成4年頃から、自社が開発した被告商品の商品名を造語「ゴミサー」に決定して以来、被告商品について「ゴミサー」標章を使用し、遅くとも平成9年頃から被告標章を被告商品に付していたこと(認定事実ア)、被告は、直接又は原告を含む複数の販売代理店を通じて事業者等に被告商品を販売し、その販売数はピークの時期で年間200台以上、平成14年以降は年間50台から100台程度であったこと(同イ及びウ)、被告のパンフレットには、被告商品の商品名として「ゴミサー」標章及び被告標章が付された被告商品の画像が表示され、被告は、販売代理店との間で契約書を締結して広告の内容についても管理していたこと(同ア及びイ)、被告商品には製造元として被告の会社名が記載された名板が付されていたこと(同カ)からすれば、本件出願(編注 平成27年1月19日)の当時、業務用生ごみ処理機について使用される被告標章を含む「ゴミサー」の標章には、被告商品の開発製造者であり、複数の販売代理店に対する販売元に当たる被告の信用が化体していたものといえる。
そして、本件出願の経緯をみると、前記1⑵アによれば、原告は、被告旧商標権が消滅していることを知ると、被告が被告商品について被告標章を使用していることを十分に認識しながら、本件販売代理店契約の継続中に、被告に無断で原告商標権の設定登録を受けたものである。また、原告による権利行使に至る経過をみても、原告が主張する被告による本件販売代理店契約の一方的解消の事実を認めることができないのは前記1⑵イのとおりであり、かえって、前記1⑴キ~サ認定の経過に照らせば、原告は、原告商標権の設定登録の事実を被告に知らせず、被告による被告標章の使用に対する権利行使もしていなかったにもかかわらず、被告との間で本件販売代理店契約の終了や「ゴミサー」標章の使用について何らの協議をすることがないまま、被告商品の販売を中止し、「ゴミサー」の標章を付した原告商品の販売を開始し、その後、本件無効審判請求が確定したのを受けて、原告商標権の権利行使を行ったものである。以上のとおりの「ゴミサー」標章に化体した信用の帰属、本件出願から権利行使に至る経緯、被告における被告標章の利用状況など本件に現れた一切の事情に照らせば、原告の被告に対する原告商標権に基づく権利行使は、権利の濫用として許されないというべきである。
コメント
本件事案については、原告の被告に対する商標権行使は、権利の濫用として侵害請求が棄却されたものである。原被告間では、以前から被告商品(業務用生ごみ処理機「ゴミサー」)の取引関係にあって、被告商標権が消滅したのを機に原告が無断で本件商標権取得して行使したもので、それ以前に既に被告の信用が化体していたとされた。これらの事情を知りながらの原告の行使は、権利の濫用との判断も妥当と理解される。被告の更新申請の懈怠が発端でもあり、商標の管理の重要性をも教えている。
