2026-03-02

工藤莞司の注目裁判:登録商標「マイクロブタカフェ」は指定役務の態様、提供の方法を表示するとされた事例

(令和7年12月23日 知財高裁令和7年(行ケ)第10079号 「マイクロブタカフェ」事件)

事案の概要
 被告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標「マイクロブタカフェ」(標準文字 登録第6254927号)、35類及び41類の指定役務のうち、35類「カフェテリアの事業の管理」及び41類「愛玩動物の供覧、動物と触れ合うことを目的とした娯楽施設の提供」(「本件審判請求に係る指定役務」)の登録について、 原告(審判請求人)は、商標法3条1項3号該当性を理由に登録無効の審判(2024-890045)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。

判 旨
 本件商標の構成中、「マイクロブタ」の文字部分については、前記⑴のとおり、「マイクロブタ」の称呼と「超小型の豚」の観念が生ずるところ、①ミニブタより更に小型の豚「マイクロブタ」は、2008年(平成20年)頃から、イギリスなどで、ペットとして販売されるようになり、遅くとも平成24年頃には、イギリスで「マイクロブタ」が人気となっていることが、日本において紹介されていたこと、②「マイクロブタ」は、平成27年頃以降、日本においても、ペットとして注目されるようになり、イギリスから初めてマイクロブタの親豚が日本に輸入されたことが報じられた平成30年から登録査定時までの間に、マイクロブタの特徴、飼育の様子等を紹介する記事や動画がウェブサイトに相当数投稿されるなどしてきたこと、③この間、「マイクロブタ」は、ミニブタより更に小型の豚とされ、当初は、ミニブタと異なり、日本国内での流通がほとんどないとされるなど、家畜として飼育される普通の豚はもとより、「ミニブタ」とも区別されていたことは、前記 ⑵のとおりである。そうすると、登録査定時である令和2年5月8日において、「マイクロブタ」は、「ミニブタ」より更に小型の「超小型の豚」を意味する語として、一般に認識されるに至っていたものと認めるのが相当である。また、「カフェ」の文字部分については、前記⑴のとおり、「カフェ」の称呼と「主としてコーヒーなどの飲み物を供する店、喫茶店」の観念が生ずるところ、登録査定時でにおいて、既に、種々の動物の名称を冠した、特定の動物と触れ合うことのできる喫茶店が存在し、平成31年春には、マイクロブタと触れ合うことのできる喫茶店も開店していたことは、前記⑵ のとおりであって、前記アの事情も併せ考慮すると、登録査定時において、「マイクロブタカフェ」は、「超小型の豚」である「マイクロブタ」と触れ合うことのできる喫茶店を意味する語として、本件審判請求に係る指定役務の取引者、需要者に一般に認識されるに至っていたものと認めるのが相当である。そして、このような本件商標を構成する文字の語義及び本件審判請求に係る指定役務の取引の実情に照らすと、本件商標「マイクロブタカフェ」は、「超小型の豚である『マイクロブタ』と触れ合うことのできる喫茶店」という、役務の態様、提供の方法その他の特徴を普通に用いられる方法で表示記述する標章のみからなるものであり、本件審判請求に係る指定役務の取引に際し、必要適切な表示として、何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他役務識別力を欠き、商標としての機能を果し得ないものというべきである。以上によれば、本件商標は、役務の態様、提供の方法その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、商標法3条1項3号に該当するというべきである。

コメント
 知財高裁は、本件商標「マイクロブタカフェ」は、「超小型の豚である『マイクロブタ』と触れ合うことのできる喫茶店」を認識させ指定役務の態様、提供の方法の表示として、商標法3条1項3号に該当と判断し、これを否定した審決を取り消したものである。原告提出の甲号証により認定し、判断されたもので、査定時前にこのような取引の実情があったというのである。最近外国から移入された特殊な分野の取引態様と思われ、職権での探知は困難で、甲号証に依拠せざるを得ないであろう。