(令和7年8月21日 東京地裁令和6年(ワ)第70579号 「ジェットバブル」侵害事件 原告控訴棄却・控訴審令和8年3月11日 令和7年(ネ)第10072号)
事案の概要
原告(商標権者)は、超音波洗浄や化学洗浄などの先端技術を用いた工業用設備又は部品の洗浄、メンテナンス等の高精度な洗浄サービスを業としており、本件商標「ジェットバブル」の商標権(登録第4736592号37類 指定役務上水道設備の保守又は洗浄清掃)を保有している。他方、被告は、工業用設備又は部品の洗浄、メンテナンス等の洗浄サービスを業としているところ、「SUPER JET BUBBLE」(標章1)の標章が付されたトラックを使用して高圧洗浄を行ったほか、被告のウェブページ上に同標章又は「ジェットバブル」(標章2)の標章を使用した。原告が、被告に対し、被告による各行為が本件商標権を侵害すると主張して、商標法38条3項に基づく損害賠償金及び民法703条に基づく利得金の一部並びにこれに対する所定の遅延損害金の支払を求めた事案である
判 旨
前記前提事実、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、被告は、平成16 年11月頃以降、日本ジェッターズを経営していたAiの了解及び協力の下で、被告標章1が付された本件トラック1及び2の使用を開始するとともに、被告のウェブページへの本件トラック1及び2の写真の掲載及び被告標章2の記載を開始して、本件トラック1及び2を用いた洗浄工事を実施していたこと、そのような協力関係の下で、Aiが発明者であるジェットバブル工法に関する本件特許につき、被告が特許権者となったこと、日本ジェッターズ が平成29年2月16日に原告に対し本件商標権を移転した後も、上記と同様の状況が続き、被告はAiが経営する環境アコロから依頼を受け令和元年 7月2日及び令和3年3月9日に本件トラック1又は2を用いて作業を行ったこと、被告代表者が令和4年5月頃にAiに対し環境アコロに関する代金の支払いを求めたところ、原告代表者から初めて本件商標権の侵害を主張されるようになったこと、被告が同年11月に環境アコロに対し書面で代金の支払いを求めたところ、原告及び環境アコロから被告に対し同年12月15 日付で本件警告書が送付され、被告は、同年12月末までには被告標章1及び2の使用を止めたこと、以上の事実が認められる。上記認定事実によれば、日本ジェッターズ及び同社からその後に本件商標権を譲り受けた原告は、被告が被告標章1及び2の使用を始めるようになった平成16年11月頃から、令和4年12月15日の本件警告書の送付までの約18年もの間、被告が被告標章1及び2を使用していることを認識しながらその中止を求めなかったことが認められる。これらの事情の下においては、原告は、被告に対し、少なくとも令和4年12月15日に本件警告書を送付するまでは、被告標章1及び2の使用を黙示に許諾していたものと認めるのが相当である。そして、被告は、本件警告書を受領した後、間もなく被告商標1及び2の使用を自ら止めているのであるから、本件商標権侵害があったものと認めることはできない。
コメント
本件侵害訴訟では、被告に黙示の使用許諾があったと認められて、原告の請求が棄却された事例である。被告は、原告から本件商標が付されたトラックを買い受け、洗浄行為を実践していたもので、原告に対する洗浄行為を機に侵害と警告されたが、その間18年経過という事例で、黙示の使用許諾の判断も肯ける。通常使用権は、文書を交わさない口頭での許諾の外に、本件のように口頭でなくとも、一定の関係者の間で長い間黙認状態が継続している場合も黙示の許諾と認められ得る。控訴審でも、黙示の使用許諾があったとして原告の控訴が棄却された。
