2026-05-12

中国:懲罰的賠償の適用に関する解釈を発表、5月1日施行 - 北京路浩

最高人民法院による知的財産権侵害民事紛争事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈(法釈〔2026〕7号)は、2026年4月7日付けの最高人民法院審判委員会の第1972回会議にて可決され、2026年5月1日から施行される。

最新の解釈は、「故意」及び「情状が深刻である」と認定される状況をさらに細分化し、基数の算定方法をさらに明確し、倍数の確定方法を改善した。詳細は以下の通りであり、赤字は法釈〔2021〕4号からの変更となる。

最高人民法院による知的財産権侵害民事紛争事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈

(法釈〔2026〕7号)

知的財産権の重大な侵害行為を法に基づき厳正に処罰し、知的財産権に係る懲罰的損害賠償制度を厳格に実施するために、「中華人民共和国民法典」「中華人民共和国著作権法」「中華人民共和国商標法」「中華人民共和国専利法」「中華人民共和国反不正競争法」「中華人民共和国種子法」「中華人民共和国民事訴訟法」等の関連法律の規定に基づき、裁判実務を踏まえて、本解釈を制定する。

第一条 原告がその法により享有する知的財産権を、被告が故意に侵害しており、かつ、情状が深刻であると主張し、被告に懲罰的賠償責任の負担を命じる判決を請求した場合、人民法院は、法により、これを審理審査・処理しなければならない。本解釈にいう故意は、商標法第六十三条第一項及び反不正競争法第十七条第三項に規定する悪意を含む

第二条 原告は、懲罰的賠償を請求する場合において、訴訟提起時に賠償額、算定方法及び根拠となる事実と理由を明確にしなければならない。

第三条 原告が一審の法廷弁論の終結前に懲罰的賠償の請求を追加した場合、人民法院はこれを許可しなければならない。二審において懲罰的賠償の請求を追加した場合、人民法院は当事者の自由意思の原則に基づいて調停することができる。調停が成立しない場合は、これを支持しない別件訴訟を提起するよう当事者に告知する

第四条 知的財産権侵害訴訟において原告が損害賠償を請求したものの懲罰的賠償を請求せず、人民法院から釈明を受けてもなお請求せず、訴訟終結後に同一の侵害事実に基づき別途訴訟を提起して懲罰的賠償を請求した場合、人民法院はこれを受理しない

第五条 原告が、被告の故意による営業秘密侵害以外の不正競争行為に対して懲罰的賠償を請求する場合、人民法院はこれを支持しない。ただし、法令に別段の規定がある場合はこの限りではない

第六条 知的財産権侵害の故意の認定について、人民法院は侵害された知的財産権の客体の類型、権利状態及び関連製品の知名度、被告と原告又は利害関係者との間の関係等の要素を総合的に考慮しなければならない。

被告に次の各号に掲げる事由に該当する場合、人民法院は、被告が知的財産権を侵害する故意を有するものと初步的に認定することができる。ただし、当事者がこれに反する十分な証拠をもって反論した場合はこの限りではない。

(一)被告が原告又は利害関係者からの有効な通知、警告を受けたにもかかわらず、権利侵害行為を引き続き実施した場合
(二)被告又はその法定代表者、管理者が原告又は利害関係者の法定代表者、管理者、実際の支配者であり、侵害された知的財産権を知っていたか又は知り得べきであった場合
(三)被告が原告又は利害関係者と労働、労務、協力、許諾、販売、代理、代表等の関係を有し、かつ前述の関係に基づき侵害された知的財産権に接触したことがある場合
(四)被告が原告又は利害関係者と業務上のやり取りがあるか又は契約の締結等のために交渉したことがあり、かつ前述の関係に基づき侵害された知的財産権に接触したことがある場合
(五)被告が海賊版、登録商標詐称行為、他人特許権詐称行為を実施した場合
(六)原告と和解を成立させ、侵害行為を停止することに同意した後、再度同一又は類似の侵害行為を実施する場合;
(七)関連会社を設立し、法定代表者又は支配株主を変更し、匿名の会社を設立するなどの方法で実質的な支配関係を隠蔽し、又は免責契約を締結することにより、係争中の知的財産権を侵害する法的責任を回避する場合;
(八)その他故意と認定できる場合

第七条 知的財産権侵害の情状が深刻であることの認定について、人民法院は権利侵害の手段、回数、権利侵害行為の継続期間、地理的範囲、規模、結果、侵害者によるその侵害行為に対する認識、基本的態度訴訟における権利侵害者の行為等の要素を総合的に考慮しなければならない。
被告が次の各号に掲げる事由のいずれか一つに該当する場合は、人民法院は情状が深刻であると認定しなければならないすることができる
(一)権利侵害により行政処罰を受けたか、又は法院により法的責任を負う旨の判決を受けた後に、同一又は類似の権利侵害行為を再び実施した場合
(二)正当な理由なく保全裁定の履行を拒否した場合
(三)権利侵害に係る証拠を偽造、毀損又は隠蔽した場合
(四)侵害行為を主たる事業とする又は侵害による利益を主たる利益の源泉とするなどの知的財産権侵害を業としている場合
(五)侵害による利益が巨額である又は侵害行為によって権利者のビジネス上の信用、市場シェア等が著しく損なわれた場合権利侵害により獲得した利益又は権利者の被った損害が大きい場合
(六)権利侵害行為が国家の利益安全社会の公共利益又は人身の健康危害する又は危害する恐れがある場合
(七)その他情状が深刻であると認定できる場合

第八条 人民法院は懲罰的賠償額を確定するにあたって、それぞれ関連法律に基づき、原告の実際の損害額、被告の違法所得額又は権利侵害により獲得した利益を算定基数としなければならない。当該算定基数には、権利侵害を制止するために支払った合理的な支出を含まない。法律に別途の規定がある場合は、その規定に従う。

前項にいう実際の損害額、違法所得額、権利侵害により獲得した利益の算定がいずれも困難である場合、人民法院は法により当該権利の使用許諾料の倍数を参照して合理的に懲罰的賠償の算定基数を確定する確定するとともに、これを懲罰的賠償額の算定基数とする

法定賠償額を懲罰的賠償の算定基礎とすることはできない。

第九条 被告の違法所得又は侵害による利益を懲罰的賠償の算定基数とする場合、営業利益を参照して確定することができる。被告が知的財産権侵害を業としている場合、売上利益を参照して算定することができる。利益率を確定できない場合、統計部門、業界団体等が公表した同期間・同業種の平均利益率又は権利者の利益率を参照して算定することができる。

第十条 人民法院が法により、被告に対してその把握している権利侵害に関連する帳簿、資料の提出を命じ、被告が正当な理由なくその提供を拒否したか又は虚偽の帳簿、資料を提出した場合、人民法院は原告の主張及び証拠を根拠参考にして懲罰的賠償額の算定基数を確定することができる。民事訴訟法第百十四条に規定する事由にあたる場合には、法により法的責任を追及することができる。法律に別途の規定がある場合は、その規定に従う。

第十一条 人民法院は法により懲罰的賠償の倍数を確定するにあたって、被告の主観的過失の程度、権利侵害行為の情状の深刻さ等の要素を総合的に考慮しなければならない。懲罰的賠償の倍数は法定の範囲内で定められ、整数でなくてもよいである。

第十二条 人民法院が懲罰的賠償を適用して確定する賠償額の総額は、算定基数の5倍を上限とする。権利者が権利侵害を制止するために支払った合理的な支出は、当該総額のほかに別途算定する。

第十三条 同一の権利侵害行為により既に行政過料又は刑事罰金が科されかつ執行が完了した場合、人民法院が懲罰的賠償の倍数を確定する際にこれを考慮しなければならない。被告が懲罰的賠償の責任の減免を主張した場合、人民法院はこれを支持しない。ただし、前項にいう倍数を確定する際に総合的に考慮することができる。

第十四条 本解釈は2026年5月1日より施行する。

本解釈の施行後は、「 最高人民法院による知的財産権侵害民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈」( 法釈〔2021〕4号)は同時に廃止する。

本解釈の施行前にすでに効力の生じた裁判が確定した事件については、本解釈の施行後に当事者が再審を申し立て、または審判監督手続により再審が決定された場合には、本解釈が適用されない。

本文は こちら (中国知財情報)