英国の美容業界を代表する非営利の業界団体であるBritish Beauty Councilが公表した最新の「Value of Beauty 2026」レポートが公開された。このレポートは、2025年における英国の美容・パーソナルケア産業の現状を示す非常に興味深い概況を提供している。
特に目を引いたのは、業界の業績と商標出願件数との間に生じている乖離である。
2024年は、業界の成長率と商標出願件数との間には比較的高い相関関係が認められ、いずれも緩やかな増加を示していた。しかし、2025年は状況が大きく異なっており、美容業界の成長率は大幅に鈍化した一方で、英国における商標出願件数は対照的にはるかに楽観的な動向を示している。
レポートによれば、数年間にわたり力強い成長を続けてきた美容・パーソナルケア業界は、2025年により厳しい事業環境に直面した。生活費上昇の圧力が継続したことを背景として、美容・パーソナルケア製品に対する消費者支出は概ね横ばいにとどまった。
2025年に、パーソナルケア産業が英国国内総生産(GDP)に直接寄与した額は144億ポンド(約3兆1千億円)であり、前年比0.2%の微減となった。一方、サプライチェーン及び従業員による消費支出の波及効果を含めると、パーソナルケア産業の英国経済全体への寄与額は283億ポンド(約6兆1千億円)に達した。
このような小幅な減少はあったものの、パーソナルケア産業のGDPへの寄与額は、依然として英国のクリエイティブ、芸術及びエンターテインメント産業を上回っている。
また、レポートは、Brexit(英国のEU離脱)後の貿易障壁が依然として影響を及ぼしていることも指摘している。関税の導入及び少額貨物に関する輸入規則の変更を受け、2025年における対米輸出は5.4%減少した。
もっとも、将来の見通しについては、より前向きな評価が示されている。独立系経済コンサルティング会社のオックスフォード・エコノミクスは、2026年には回復局面に入ると予測しており、美容製品及び美容サービスに対する消費者支出は3.9%増加し、同産業のGDPへの総寄与額は294億ポンド(約6兆3千億円)へ拡大すると見込んでいる。
商標の観点から見ると、これらの数値は特に興味深いものである。
2025年に、ニース国際分類第3類を指定商品とする英国商標出願(国内出願と国際登録出願の合計)は14,968件であったが、2024年の12,342件から21.3%の増加となった。
もちろん、これらの数字だけでは全体像を十分に把握することはできない。第3類には、従来の美容関連商品だけでなく、洗浄剤や洗濯用剤なども含まれる。また、美容産業は第3類のみにとどまらず、美容サービスを対象とする第44類や、美容器具を対象とする第8類など、他の商標区分にも及んでいる。
しかしながら、これらの出願件数は、消費者需要の鈍化及び業界成長率の低下という状況下にあっても、商標出願が顕著に増加していることを示している。これは、今後数年間に市場参入を予定している新たな美容ブランドが相次いでいることを示唆するものなのであろうか。昨年のレポートでは「成長」が主要なテーマであったのに対し、本年の調査結果の中心となっているのはレジリエンス(回復力・強靱性)である。
美容産業は引き続き英国経済に対する主要な貢献産業であるものの、2025年は、消費者需要の低迷、雇用指標の軟化及び輸出を巡る圧力の増大によって特徴付けられる一年であったものの、商標出願活動が引き続き大幅な増加を示していることは、ブランドオーナーが将来の市場に対してなお強い信頼を維持していることを示唆している。知的財産の観点から見ても、この動向は、今後注視すべき重要なトレンドの一つであることは間違いない。
本文は こちら (Resilience and brand confidence: Key takeaways from the latest Value of Beauty report)
