ファーストネームは、しばしば個人的で親しみのあるものと感じられる。しかし、商標法上でファーストネームは識別力を有する標章として機能することもあり、さらには高い評価を有する著名なブランドへと発展することさえある。
例えば、Estée Lauder(エスティ・ローダー)、Laura Mercier(ローラ・メルシエ)、Charlotte Tilbury(シャーロット・ティルブリー)は、美容業界における著名な名称である。美容ブランドの場合、ブランドの背後にいる人物そのものが、そのブランドのアイデンティティの一部となっていることも多い。その場合、その名称は単なる個人を表すものではなく、特定のスタイル、専門性、商品の出所(商業的出所)などを象徴することになる。
したがって、特定のファーストネームが既に商標として登録されている場合、それがたとえ自分自身のファーストネームであったとしても、これを商標として登録することができないという事態は十分に起こり得る。EUにおける最近の異議申立手続を見てみよう。
日本の出願人が化粧品を指定して登録出願した商標「ANASTASIA MIARAY」に対して、Anastasia Beverly Hills(アナスタシア・ビバリーヒルズ)が異議申立てを請求した。
姓やミドルネームを付加することによって、商標間に距離が生じる場合はある。しかし、それによって、類似する美容関連商品について同じファーストネームを商標登録できるわけではない。需要者がその組合せを既存の商標と結び付けることがあれば、混同が生じるおそれや、両商標が関連付けられるおそれ、さらには著名商標の名声にタダ乗り(フリーライド)して不当な利益を得るおそれが発生する。
結局、欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、アナスタシア・ビバリーヒルズの異議申立てを認めた。同社は、同社の商標が化粧品、特にまゆ毛の関連製品について広く知られていることを立証することができた。同社の商品ラインは、Sephora(セフォラ)、Douglas(ダグラス)、ICI Parisなどの小売業者を通じて広く販売されている。
EUIPOによれば、「ANASTASIA MIARAY」は、既存の商標との関連を想起させるだけでなく、その商標が有する顧客吸引力を不当に利用することにもなるとされた。その結果、当該商標出願は、指定商品の全てにおいて登録を拒絶された。
既に商標として登録されている個人名は数多く存在する。特に化粧品やファッションの分野ではその傾向が顕著である。個人名は強力なブランド・アイデンティティを構築することができる一方で、その名称を商標として自由に使用・登録できると単純に考えるべきではない。
だからこそ、商標の事前調査が重要なのだ。
本文は こちら (Personal names as trademarks: your first name is not always yours)
