(令和8年7月27日 知財高裁令和8年(行ケ)第10008号 「Alphacool」事件)
事案の概要
原告(審判被請求人・商標権者)は、「Alphacool」登録第6680828号 標準文字、9類「コンピュータ周辺機器(コンピュータハードウエアを含む。)、コンピュータ・グラフィックカード・マザー ボード・プロセッサー・電子回路及び他のコンピュータ構成部品の冷却用装置(コンピュータの冷却用の水の冷却用装置を含む)」等を指定した本件商標の商標権者である。被告(審判請求人・引用商標の使用者)は、本件商標について、登録無効審判(2025-890027)の請求をした処、特許庁は本件商標は商標法4条1項7号に該当するとして、本件商標の登録を無効とする成立審決をしたため、原告は、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。引用商標は被告が「コンピュータ周辺装置」に使用している「αCOOL」、「alphaCOOL」、「ALPHACOOL」である。
判 旨
本件引用商標は、本件商標の登録出願時(令和4年5月16日)及び登録査定時(令和5年3月15日)において、被告商品「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして、需要者の間に少なくとも一定程度は知られていたものといえる。また、本件引用商標のうち引用商標1は「αCOOL」の文字をデザイン化したものと理解され、そうすると、本件商標と本件引用商標とでは、引用商標1を含め、いずれも特定の観念を生じず、観念において比較し得ないものの、称呼(アルファクール)において共通し、外観において近似するものであるから、類似の商標というべきである。 そして、① 上記のとおり、本件引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、被告商品である「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして、需要者の間に一定程度知られていたこと、② 原告が、本件商標の設定登録を受けた後、商標掲載公報の発行の日から2か月以内に、被告販売代理店に対し、本件引用商標の使用の中止及び誠意ある対応を求める本件通知書を差し出していること、③ 原告は、本件商標の登録出願前から、コンピュータ周辺機器等について、本件商標を使用していた旨の主張をすることを踏まえると、原告において、被告が被告商品を表示するものとして本件引用商標を使用していることを知らなかったというのは不自然というべきであり、かかる事情に加え、前記1⑶の原告出願の状況をも併せ考慮すると、本件において、原告は、被告が被告商品を表示するものとして本件引用商標を使用していることを認識しながら、被告による本件引用商標の使用を妨害し、あるいは、本件引用商標の信用等に便乗する目的で、殊更に本件商標の登録出願をしたものと推認され、そうすると、本件商標は、 その登録出願の経緯に照らし、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものとして、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
コメント
本件事案では、本件商標について被告が請求した無効審判の成立審決の取消訴訟でも、原告の出願、登録には社会的相当性を欠くとして、4条1項7号違反とされたものである。被告が使用していることを知りながら、それを妨害する目的で登録を受けたと推認できるとした。原告は被告の使用は知らなかったと主張したが、登録後直ちに警告したことが認定されている。いわゆる剽窃的な登録例であろう。4条1項19号が存在する現在では、周知性がない引用商標の剽窃的な登録については、4条1項7号違反が問われる。
