2026-10-29

タイ:商標の抜駆け登録に関する原則を初めて適用し、登録商標を取消 - UNITALEN

 2026年7月、瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)がタイのロイヤル50Rグループを提訴した商標の抜け駆け登録事件において、終局判決が下された。控訴裁判所は被告の控訴を棄却し、瑞幸勝訴の一審判決を全面的に維持した。これはタイの司法史上、「商標の抜け駆け登録」という概念が初めて正式に認められた代表的な判例であり、その意義は大きく、今後、国際ブランドがタイにおいて商標の抜け駆け登録に対処する際の重要な司法上の参考となるだけでなく、中国ブランドが国際ルールに基づきブランドに関する権利・利益を守る上での大きな後押しともなる、画期的な判決であると言える。

事件の概要
 被告のタイ・ロイヤル50Rグループは、タイで瑞幸咖啡の中国語と英語の商標および鹿の頭部をかたどった図形商標を先取り的に出願、登録し、多数の模倣店舗を開設した。その模倣の手口は、本物をあらゆる面で模倣し、意図的に混同を生じさせるというものであり、具体的には、鹿の頭部の向きを「右向きに振り返る姿」から「左向きに振り返る姿」へ、「青地に白い鹿」を「白地に青い鹿」へとそれぞれ変更し、英語の「LUCKIN COFFEE」の下にタイ語を付記していた。2022年初頭、中国のネットユーザーがタイ旅行中に現地の「瑞幸」の店舗を発見した。その後、瑞幸は公式声明を発表し、タイの「瑞幸」は模倣店舗であると指摘するとともに、法的手段による権利保護に乗り出した。

 

 2022年、タイ中央知的財産国際取引裁判所(IP&IT裁判所)は一審判決において本件に係る被告の登録商標を取り消し、権利侵害の成立を認定した。2023年、専門事案控訴裁判所は判決を変更して瑞幸を敗訴とし、権利保護活動は一時困難に直面した。同年12月、今度は被告のロイヤル50Rグループが瑞幸を提訴し、計100億タイバーツ(約20億人民元)の損害賠償を請求した。
 不利な状況に直面した瑞幸は、タイの法律事務所Tilleke & Gibbinsの知的財産チームに対応を依頼した。検討の結果、それまでの判決では「どちらがより優位な商標権を有しているか」という核心的かつ実質的な問題が取り上げられていなかったため、瑞幸のタイにおける事業が妨げられていたことが分かった。この問題に対処するため、同チームは新たな訴訟戦略を策定し、2024年3月4日に再度訴訟を提起した。2025年2月6日、IP&IT裁判所は一審判決で、本件が先行事件との重複訴訟には該当しないことを認定するとともに、瑞幸が商標「Luckin」および「鹿の形状の標章」について先行する権利を有し、その権利が被告の権利よりも優位にあることを確認し、被告に1,000万タイバーツの賠償を命じた。この判決はその後、2025年のIP&IT裁判所優秀判決賞を受賞した。
 2026年7月8日、専門事案控訴裁判所は終局判決を下し、IP&IT裁判所の一審判決を全面的に維持した。具体的には、被告が抜け駆け登録した本件に係るすべての商標を取り消し、コーヒー事業における瑞幸の一連のブランド標章の使用を永久に禁止するとともに、1,000万タイバーツの基本賠償額を維持した。さらに、訴訟提起日(2024年3月4日)から1日当たり10万タイバーツの賠償金の支払いを命じた。訴訟提起日から判決日までの計856日間で、この賠償金だけでも8,500万タイバーツを超え、賠償総額は9,500万タイバーツ(約300万米ドル)を超えた。

事件の注目点および意義
 本件の終局判決は、タイで大きな注目を集めた商標紛争に終止符を打つものとなった。(1)裁判所が初めて商標の抜け駆け登録に関する原則を正式に認めた。(2)より優位な権利の原則を初めて適用し、不当に登録された商標を取り消した。(3)タイの知的財産事件史上最高額の損害賠償が命じられた。この結果は、瑞幸咖啡にとって重要な意義を有するだけでなく、タイにおいて商標の抜け駆け登録に直面する他の国際企業にとっても、直接援用できる参考事例としての価値がある。
(事例出所:瑞幸咖啡、知産庫公式アカウントの情報を取りまとめたもの)

本文は こちら (瑞幸がタイにおける商標の抜け駆け登録事件の二審で勝訴)