2026-10-28

ミャンマー外国の知的財産権者による権利行使 - Tilleke & Gibbins

ミャンマー商標法の施行から3年以上が経過し、外国の知的財産権者は、2019年制定の商標法、特許法、意匠法、著作権法に基づき、民事、刑事、水際での権利行使に関する一連の救済手段を利用できるようになった。

商標法は2023年4月1日に、著作権法および意匠法は2023年10月31日に、特許法は2024年5月31日にそれぞれ施行され、これにより、従来の登記局に権利所有宣言書を登録するという実務に代わって、新たな制度が導入された。

このような包括的な移行は、ミャンマーの知的財産制度の近代化という点で歓迎すべき進展であったが、必然的にいくつかの課題も伴っている。例えば、知的財産局(IPD)が未処理案件の解消に取り組んでいるため、多くの商標出願が依然として審査中である。また、司法判断の先例はまだ限られており、権利行使を担う機関の対応能力にも制約がある。 

このような環境では、権利行使の成否は、権利者がどれだけ十分な準備を整えているかに大きく左右される。具体的には、権利者がミャンマー国内で適時に権利を確保しているか、証拠を蓄積しているか、そして適切な手段の組合せを選択しているかが重要な検討事項となる。

登録は権利行使の基礎
ミャンマーでは、商標、特許、意匠について先願主義が採用されている。先行使用や、旧制度の下で登録された権利所有宣言書は、それだけではもはや独占権を確保するものではなく、競合する権利主張は、原則として、最も早い有効な出願日または優先日を有する出願を優先することによって解決される。ミャンマーにおいて主要な商標、意匠、発明についてまだ出願していない権利者は、第三者に先に出願されるリスクを負っており、その場合、新たに、より複雑な問題に直面することになる。

優先権については、商標と意匠では最初の出願から6か月以内に、特許と実用新案では1年以内に主張することができる。また、これに対応する博覧会優先権も利用できる。

著作権は登録を要することなく自動的に発生するが、IPDへの登録は、権利行使手続において権利の帰属を立証するための有力な証拠となる。また、税関への登録を行うための前提条件でもある。

旧制度から新制度への移行期間中に出願された案件について、IPDが現在も審査処理を進めているため、多くの権利者は、自らの出願が審査中である間もブランドを保護しなければならない。

審査中の商標出願は、抵触する商標に対する異議申立ての根拠として利用することができる。また、すでに確立された評判を有する商標は、パッシングオフの法理、または他の法律に定められた不正競争に関する規定によって保護される可能性がある。

公告された商標、意匠、実用新案の出願に対しては60日以内に、特許出願に対しては90日以内に異議申立てを行うことができる。そのため、権利者は、IPDが毎月公表する情報を注意深く監視する必要がある。

ミャンマーは、現時点でマドリッド協定議定書、パリ条約、特許協力条約(PCT)に未加入であるため、外国の権利者はミャンマー国内で直接出願しなければならない。

ミャンマーの知的財産法は、パリ条約または世界貿易機関(WTO)の加盟国における出願に基づく優先権主張について規定しているものの、現在、優先権が認められるのはミャンマーがWTO加盟国であることを根拠とする場合である。

したがって、特許出願人は、PCTに基づく30か月または31か月の国内段階移行期限を利用することができない。優先権を主張する場合には、1年間の優先期間内に出願しなければならない。

現地代理人の選任義務
ミャンマーに居住せず、同国内に事業所も有しない外国の権利者は、出願後および登録後の手続を含め、IPDに対するすべての手続を、ミャンマー国内に居住する現地代理人を通じて行わなければならない。

商標、意匠、著作権については、代理人選任書に相当する書式を権利者の本国において公証する必要がある。一方、特許出願については、現在、IPDは公証を要求していない。
代理人が選任されると、IPDは当該代理人とのみ連絡を行う。

税関を通じた水際対策
ミャンマーにおける模倣品および海賊版商品の相当部分は国境を越える取引を通じて流入しているため、水際対策は、多くの場合、最も効果的な初動の防御手段となる。
これらの商品を輸入時点で差し止めることにより、国内の流通経路への流入を防ぐことができる。いったん国内流通網に入った商品は、追跡や排除がはるかに困難となり、費用も増大する。

税関による措置は、国内に物理的な拠点を持たない外国の権利者にとっても、実務上有効な手段となる。すなわち、現地代理人を通じて侵害を監視し、差し止められた商品を証拠として確保するとともに、その後の民事訴訟または刑事手続に向けて輸入業者を特定することが可能となる。

登録商標の権利者および著作権者は、税関に権利を登録することができる。
また、税関への権利登録の有無にかかわらず、権利者は、十分な根拠および裏付けとなる証拠を提出することを条件として、模倣品または海賊版である疑いのある輸入品の通関・引渡しを停止するよう、税関局長に申請することができる。

裁判手続および行政上の措置
権利者は、知的財産裁判所(Intellectual Property Court)において手続を開始することもできる。具体的には、民事訴訟、暫定的措置を求める民事の付随申立て、および利用可能な場合には刑事告訴という形態がある。

商標と著作権については、民事手続と刑事手続の双方を利用できる。一方、特許と意匠については、それぞれの知的財産法に従い、民事手続を通じて権利行使を行う。

利用可能な救済措置には、差止命令、実損害額またはあらかじめ定められた損害賠償額の支払い、侵害者が得た利益の返還、訴訟費用および弁護士費用の負担、ならびに侵害品および侵害に使用された器具・道具の廃棄が含まれる。
さらに、刑事上の犯罪については、拘禁刑、罰金、またはその両方が科される可能性がある。

知的財産法に基づく救済措置に加え、権利者は、対象となる製品や侵害の性質に応じて、食品医薬品局(Food and Drug Administration)、ミャンマー競争委員会(Myanmar Competition Commission)、消費者保護局(Department of Consumer Affairs)などの分野別規制当局に苦情を申し立て、行政上の措置を求めることもできる。

ビジネス上の展望
ミャンマーにおける近代化された知的財産制度の実施状況には、依然としてばらつきがある。知的財産に関する司法判断の先例はまだ限られており、損害額の算定についても実務上の検証が十分に進んでいない。そのため、多くの紛争は、引き続き個別の事情に応じて解決されている。

知的財産法は、紛争を相互協議、仲裁または司法手続によって解決することを明示的に認めている。現在の環境では、交渉による解決は、長期化する訴訟に代わる実務的な選択肢となることが多い。
外国の権利者にとって、ミャンマーで効果的に権利を行使するための準備は、侵害が発生するよりもずっと前から始まる。

主要な商標、意匠、発明については、適用される優先期間内に速やかに出願すべきである。出願が審査中である間は、異議申立てを期限内に行えるよう、IPDの公告情報を監視する必要がある。また、権利の帰属、使用実績、評判、侵害に関する証拠を、継続的に保存しておくべきである。
著作権者は、税関への権利登録制度を利用できるよう、著作物の登録も検討すべきである。

法的措置を講じる前に、権利者は、侵害者に関する包括的な調査を含め、訴訟提起前の戦略を策定する必要がある。
その上で、侵害者の状況とミャンマーの権利行使機関の現時点での対応能力に応じて、侵害行為の停止要求、国境措置、行政機関への苦情申立て、交渉による和解、ならびに民事または刑事手続を組み合わせ、相互に連携した戦略を構築すべきである。

本文は こちら (Enforcing Foreign IP Rights in Myanmar)