2026-10-19

EU:伊メローニ首相が声を商標出願、登録によって保護されるものは? - Knijff Trademark Attorneys

イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、公人としてメディアにおいて大きな存在感を示している。その一方で、メローニ首相はディープフェイクの標的にもなっている。AIツールの進歩によって、ディープフェイクの作成はますます容易になってきており、メローニ首相は、これまでにもこうしたディープフェイクに対して法的措置を講じてきた。

最近、メローニ首相は、自身の声をEUにおいて商標登録出願した。この音商標は、メローニ首相がイタリア語で「私はジョルジャ・メローニです」と2回連続して発声する音から構成されている。報道によれば、メローニ首相はディープフェイクに対抗するための新たな武器として、この商標を出願したという。この件からは、米国で声の商標を出願したテイラー・スウィフトの事例が直ちに想起される。しかしながら、そもそもこのような出願に意味があるのか、という大きな疑問が残る。  

音商標は、欧州連合知的財産庁(EUIPO)に登録することができる。したがって、音商標が不正使用に対抗する手段となり得るという考え方は、決して的外れではないが、真に問題となるのは、その登録によって実際に何が保護されるのかという点である。

その答えは、登録されたとおりの音声、すなわち、登録された文言を伴う音声である。したがって、声を商標登録する者は、具体的な録音、つまり、特定の文言を発声する声を記録することになる。保護の対象は、その音声と同一又はそれと十分に類似する音声であって、声そのものではない。したがって、ディープフェイクがメローニ首相の声を生成して使用しても、発声される文言が違えば、その時点ですでに、この音商標による保護の限界に直面することになる。

なお、ここでは、EUIPOが当該の声を商標として受け入れることを前提としている。しかし、これ自体が大きな障害となり得る。メローニ首相の声は非常によく知られているかもしれないが、それによって当該の声が識別力を有することになるわけではない。言い換えれば、そもそもメローニ首相の声が商標として認められるかどうかについても、まだ結論は出ていない。

メローニ首相がディープフェイクの許容性をめぐる議論を喚起していることは、歓迎すべきことである。しかし、残念ながら、この音商標がメローニ首相にとって大きな助けになるとは考えにくいのも事実だろう。

本文は こちら (Meloni’s voice trademark application: a lost voice)