クルスカンポ(Cruzcampo)は、スペイン南部で最大かつ最も広く飲まれているビールブランドである。このブランドは、ハイネケン・スペインが所有している。このブランドのロゴは、一目で目を引くデザインで、盾形の赤と金色の輪郭の中に、このブランドのマスコットであるガンブリヌス(Gambrinus)のイラストが描かれ、その下にブランド名「Cruzcampo」が配置されている。
「Cruzcampo」の「C」の文字は、印象的で優美なデザインとなっている。ハイネケンは、この「C」の文字を商標として登録している。この登録商標が役立つ場面が訪れたのは、イタリアのビールメーカー、ビッラ・カステッロ(Birra Castello)が、同じく図案化した「C」の文字を含むビールに関する欧州連合商標の登録出願を行ったときであった。
ハイネケン・スペインは、ビッラ・カステッロの欧州連合商標登録出願に対して異議を申し立てた。その理由として、出所について混同を生ずるおそれがあること、すなわち、消費者が、両者のビールは同一の企業、または経済的に関連する企業に由来するものと考える可能性があると主張した。しかし、欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、この異議申立てを退けた。
異議申立ては、商品自体に問題はなかった。両商標とも、ビールを指定商品として出願されていたからである。EUIPOによれば、1文字だけで構成される標章も、当然ながら商標となり得る。しかし、外観上の比較において、EUIPOは、両商標の類似性は低い程度にとどまると判断した。先行商標の「C」に見られる長方形状の突出部分は、後願商標の「C」に見られる左右対称のくぼみとは異なる特徴であるとされたのである。
称呼上、両商標は同一であるものの、1文字のみからなる商標の場合、称呼の同一性が占める比重は小さい。EUIPOは、両商標には十分な相違があるため、混同のおそれは認められないと判断した。EUIPOによれば、同一の大文字について、異なる図案化の2つの商標の間に混同のおそれを認めることは、実質的に、特定の商品群について、一方の当事者に当該文字の独占権を付与することに等しい。
EUIPOの決定は、1文字のみからなる標章であっても有効な商標となり得る一方、他者の商標にも同一の文字が使用されている場合、両商標が外観上類似すると判断されるためには、さらに図形的な類似性が認められる必要があることを示している。
本文は こちら (Beer dispute over the letter C: how far does the protection of a single letter reach?)
