事件番号: 東京地裁 平成26年(ワ)第24118号「技術的制限手段付カラオケ機器改造事件」損害賠償請求事件(平成27年9月30日)
事件概要 本件は、原告製造の通信カラオケ機器には、原告と契約を締結せずに楽曲サービス等の利用を回避するための機能が搭載されている処、被告らが被告会社の顧客が原告に利用料を支払うことなく利用できるカラオケ機器を販売することを企図し、被告会社代表者、被告A及び被告Bが、被告C提供の部品を用いて、上記機能を回避できるよう原告通信カラオケ機器を改造し被告会社が同機器を販売したことが、不正競争防止法2条1項10号(現11号以下同じ)のコンテンツ技術的制限手段に対する不正競争に該当するとして、被告らに対し、損害賠償等を求めた事案である。
争 点 本件改造行為及び本件販売行為により原告が受けた損害の額である。
結 論 被告機器の販売価格が14万8000円、15万8000円又は18万8000円であったことからすれば、口座入金状況一覧表記載の入金のうち、入金額が14万6173円以上26万5000円以下のものは被告機器を1台販売して得た代金、入金額が29万2923円以上42万2203円以下のものは被告機器を2台販売して得た代金、入金額が45万5443円以上のものは被告機器を3台販売して得た代金とそれぞれ推認するのが相当である。なお、口座入金状況一覧表の番号53及び54は、その合計額が18万9100円であるから、被告機器を1台販売して得た代金と推認できる。 上記・・・認定によれば、被告会社は、被告機器を73台販売し、1台あたり6万5000円の利益を得ていたということができるから、本件販売行為とその前提となる本件改造行為により、474万5000円の利益を得たものと認められ、同額は、不競法5条2項の規定により、原告が受けた損害の額と推定される(商標権侵害による原告の損害額が上記474万5000円を上回ると認めるべき事情はない。)。
コメント 不正競争防止法2条1項10号のコンテンツ技術的制限手段に対する不正競争に係る裁判例であるが、同行為該当性については被告が争わないため、専ら損害額について争われて、弁護士費用を含め一部認容されたものである。 なお、原告登録商標が付されたままで、原告通信カラオケ機器を改造し被告会社が同機器を販売したため、商標権侵害による損害賠償請求も選択的併合とされた事案でもある。また、判決記載によれば、被告会社らは,既に商標法違反事件の被告人として起訴され千葉地方裁判所(同庁平成26年(わ)第514号)は,被告会社らに対し有罪判決を宣告したという珍しい事案でもある。
工藤 莞司