特許庁では、「商標審査基準」を作成して、審査に供すると共に、公表して、審査の予測可能性や判断の透明性を確保している。インターネット時代到来等、社会情勢の変化に対応し、またユーザーにとって明確で、分かりやすくするため、知財推進計画2015において従来の審査基準について見直しが求められた。既に、審議会商標審査基準WGにおいて、商標法3条等までの審査基準については見直しが済み、平成28年4月1日施行されている。この度、商標法4条以降分について見直し作業が済み改訂案(「改訂案2」という。)が公表され、現在パブリックコメント手続中である(特許庁ウェブサイト参照)。
改訂案2の中から、実務上使用頻度が多く、ユーザーの関心度も高いと思われる「商標法4条1項11号」に係る改訂案の一部を紹介する。大半は従来基準を再編成して、分かりやすくしているものであるが、新設基準もある。
○冒頭1.(1)の「商標の類否判断方法について」は、「・・・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、・・・出所の混同のおそれがあるか否かにより判断」と改正し、氷山印事件最高裁判例(昭和43年2月27日 最高裁昭和39年(行ツ)第110号 民集22巻2号399頁)を採り入れている。しかし、この基準の下で、考慮すべき指定商品等の取引の実情については、一般的・恒常的なものとし、特殊的・限定的なものは考慮しないと明記している。
○「1.(2)商標の観察方法」として、全体観察の外、要部観察や分離観察も有り得る旨を定め、そして、離隔的観察であることを確認している。
○新設基準として、3.において、「(1)外観の類否について、(3)観念の類否について」、外観の認定、観念の認定の基準を示し、それぞれの類否については、類似する場合、類似しない場合について、具体例を掲げている。従来は称呼類似のみの基準で占め偏重の嫌いがあり、待たれていた基準の新設と言えよう。
以上の改訂案はほんの一端で、改訂案2は、「商標法4条1項1号から64条、その他」と多くの基準の改訂案が示されている。基準案毎に見出しが付与され、また丁寧な規定振りが特徴的である。今後は、パブリックコメントを経て、その意見をも踏まえて最終決定され、本年4月1日施行が予想される。(工藤莞司)