2020-02-13

日本:注目裁判例、国外在オンラインショップからの商品譲渡が使用と認められた事例 - 工藤莞司弁理士

国外在オンラインショップのウェブから我が国での商品の譲渡が推認されるとして使用が認められた事例「AROMA ZONE不使用取消事件」(令和2年1月28日 知財高裁令和元年(行ケ)第10078号)

事案の概要 請求人(被告)は、不使用取消審判に基づき本件商標登録(国際登録第1217328号)の取消しを求めて審判請求(2018-670040)をした処、被請求人が使用証明等をしなかったため、特許庁は成立の審決をした。これに対して、被請求人(原告)は、その取消しを求めて、知財高裁に提訴した事案である。原告は、高裁において使用証明をしたようである。

判旨 認定事実を総合すると、原告は、ランジュビオ(編注・仏国在オンラインショップ業者)に対し、日本において消費者に販売されることを認識しつつ本件商標を付して使用立証対象商品を譲渡し、ランジュビオは、本件要証期間中に、本件商標を付した状態で日本の消費者に対して本件使用対象商品を譲渡した事実を推認することができるし、少なくとも、ランジュビオが譲渡のための展示をしたことは明らかである。かかる事実によれば、本件商標は、本件要証期間内に、商標権者である原告によって、日本国内で、使用立証対象商品に、使用されたものと評価することができる。

コメント 本件事案では、国外在オンラインショップにおけるウェブ搭載事実から、わが国での使用商品の譲渡の事実について推認出来るとして、本件登録商標の使用が認められたもので、珍しい裁判例である。我が国での譲渡事実について直接の立証はなかったが、仏国在の商標権者が、我が国需要者向け用に、同国在のオンラインショップへ譲渡し、日本円を表示している同ショップの販売活動からの推認と思われる。わが国での輸入や我が国内での商品販売事実について、何ら立証出来ないことも珍しく、この点で、推認可能なら商標権者側の立証負担の緩和になろう。
なお、米国在サーバーですべて英語表示のウェブページは、日本からもアクセス可能、検索可能であるが、そのウェブページによる広告は日本国内におれる使用には当たらないとした裁判例がある(「PAPA JOHON’S事件」平成17年12月20日 知財高裁同17年(行ケ)第10095号 判例時報1922号130頁)。本件では、日本向け商品であることが評価され、展示も認定された。
 被告は、「商標権者が、販売代理店契約等に基づき第三者が商標権者を代理して日本国内で販売することを契約上認識していることが必要」と主張したが、斥けられた。輸入業者等が商標権者と代理店契約をして、輸入や国内販売することは一般的ではないし、登録商標を付した商品がわが国内へ輸入されれば、それで商標の使用である(2条3項2号)。そして、その場合本件では商標権者の使用である。