(「モリアージュ加圧ブラ事件」令和3年9月3日 東京地裁令和元年(ワ)第11673号)
事案の概要
本件は、女性用下着(「原告商品下掲左・商品名「ふんわりルームブラ」」)を販売する原告が、被告に対し、被告が女性用下着(「被告商品1」下掲右、「被告商品2」・商品名「モリアージュ加圧ブラ」)を販売した行為は、不正競争防止法2条1項1号、3号の不正競争に該当すると主張して、被告各商品の差止め及び損害賠償の請求をした事案である。商品表示性及び周知性が否定されて、2条1項1号には該当しないとされた。
判 旨
被告商品1は、原告商品が備える形態①ないし⑦ を全て備え、全体的なデザインはほぼ同一であるといえる。そうすると、相違点①及び②は、いずれもわずかな改変に基づくものであり、商品の全体的形態に与える変化は乏しく、商品全体から見て些細な相違にとどまるといえるから、被告商品1は原告商品と実質的に同一の形態であると認めるのが相当である。
被告商品1の販売が開始された平成30年10月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開始されているところ、本件全証拠によっても、被告が被告商品1を独自に開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると、被告は原告商品の形態に依拠して被告商品1を作り出したと推認するのが相当である。被告商品1は、原告商品の「商品の形態」を「模倣した商品」であると認められる。被告商品2ついても、同旨の認定、判断。
以上によれば、被告各商品は、原告商品の「商品の形態」を「模倣した商品」であると認められるから、被告が被告各商品を販売する行為は、2条1項3号の不正競争に該当する。
原告の請求は、被告に対して2億0274万5063円及びうち・・・年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。
コメント
本件では、被告の行為は、不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣行為に該当するとされたものである。商品形態の模倣については、他人の商品形態に依拠して、これと実質的に同一の商品を作り出すことである(2条5項)。そして、先行商品形態と実質的同一の形態で、独自開発の立証がないときは、模倣と推認される。但し、先行商品が市場に置かれてから3年間経過後は2条1項3号の適用はない(19条1項5号イ)。
本件では、原被告商品形態については、僅かな改変はあるが殆ど同一と認定され、原告商品が約2年前に販売開始されていて、被告が独自開発については何ら立証しないことから、模倣が推認された。わかり易い商品形態模倣行為の該当例である。そして、約2億円という高額な賠償が認められている。