特許庁は、商標を活用したブランド戦略展開に向けた商標制度の課題について検討を行っている産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会(以下、商標制度小委員会)の報告書案を公開した。報告書案は、今月23日に行われる第11回商標制度小委員会で審議される。
2022年9月以降、商標制度小委員会において、主として「他人の氏名を含む商標の登録要件緩和」、「コンセント制度の導入」、「Madrid e-Filing により商標の国際登録出願をする際の本国官庁手数料の納付方法の変更」について検討を行ってきており、報告書で審議内容を取りまとめ、より多くのユーザーが商標制度を活用できるように、商標制度の見直しについて提言する。
報告書案の内容は主に以下のとおり;
1.他人の氏名を含む商標の登録要件緩和
法改正の趣旨は、現行法と同様、他人の氏名に係る人格的利益を保護することにあり、一定の知名度の要件と出願人側の事情を考慮する要件との関係性については、(i)商標に含まれる他人の氏名が一定の知名度を有する場合には、人格的利益の侵害の蓋然性が高いと考えられることから、出願人側の事情のいかんを問わず、出願が拒絶されることとなり、(ii)商標に含まれる他人の氏名が一定の知名度を有しない場合は、出願人側の事情を考慮することで、他人の人格的利益が侵害されるような濫用的な出願は拒絶されることとなる。
これにより、一定の知名度を有する他人の人格的利益のみならず、一定の知名度を有しない他人の人格的利益についても考慮されることになるため、他人の人格的利益の保護という趣旨が制度設計において適切に反映されていると考えられる。なお、「人格権に由来する権利の一内容を構成するもの」と位置づけられているパブリシティ権をも保護するものである。また、「他人の氏名」に課す一定の知名度の要件(求める知名度の程度や知名度の判断基準となる需要者の範囲)及び出願人側の事情を考慮する要件の詳細については、法制化に際して更に検討を行う。
2.コンセント制度の導入
コンセント制度導入に関しては、反対意見もあるものの、近年、コンセント制度導入に対するユーザーニーズが高まっていること、国際的な制度調和の要請があること等を踏まえ、我が国においてコンセント制度を導入することが適当であるという意見が多数あり、おおむね賛同が得られたことから、商標制度小委員会としては導入を進める方向で取りまとめを行った。
その制度設計に当たっては、商標法第1条において同法の目的の一つとして「需要者の利益」の保護が掲げられているところ、これが十分に担保されるよう、先行登録商標の権利者の同意があってもなお出所混同のおそれがある場合には登録を認めない「留保型コンセント」の導入が適当である。また、コンセントによる登録後に出所混同のおそれが生じた場合や、実際に不正競争の目的によって出所混同が生じた場合に備え、当事者間における混同防止表示の請求や不正使用取消審判請求の規定を設けることが適当である。なお、審査における出所混同のおそれの有無の判断に関する具体的な考慮要素等、詳細については検討を深める必要がある。
3.Madrid e-Filing により商標の国際登録出願をする際の本国官庁手数料の納付方法の変更
現行制度の課題及び本小委員会での検討を踏まえ、本国官庁手数料について、出願人が e-Filing を利用して国際登録出願をしようとする場合に限り、他の手数料と一括でスイスフランにより国際事務局へ納付することを可能とするため、商標法について所要の手当をすることが適当である。
報告書案は こちら