2023-07-03

工藤莞司の注目裁判:登録無効理由に係る引用商標の周知性が立証出来なかった事例

(令和5年5月31日 知財高裁令和4年(行ケ)第10074号 「UNBRAKO事件」)

事案の概要
 原告(引用商標使用者・請求人)は、被告(商標権者・被請求人)が有する本件商標「UNBRAKO」(標準文字 登録第6162919号)、指定商品6類「金属製金具」に対し、商標法4条1項7号、10号及び19号違反の登録として登録無効審判(2020-890081)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し審決取消しを求めて本件訴訟を提起した。引用商標1は、オレンジ色横長長方形内側に白抜きで「Unbrako」の構成、引用商標2は、「アンブラコ」、「UNBRAKO」との上下二段の構成、引用商標3は、「UNBRAKO」の構成からなるもので、いずれも商品「ボルト」に使用するものである。

判 旨
 引用商標は、本件商標の出願時及び査定時、日本国内において、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。したがって、本件商標は商標法4条1項10号に該当しない。
 認定事実によれば、2008 年(平成20年)以降、引用商標1が原告の業務に係る商品を表示する商標として、世界各地で一定程度使用されていたことがうかがわれるが、それ以上に、本件全証拠によっても、引用商標が、本件商標の出願時及び査定時、外国(インド、英国、米国、アイルランド又はドイツ等のいずれかの国)において、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。したがって、本件商標は商標法4条1項19号に該当しない。
 前記の事情に照らすと、本件商標は、原告が主張するように、真正品UNBRAKOファスナーの国内需要者間の出所の混乱、UNBRAKOファスナーの国際市場における混乱等をもたらすものとは認められず、また、原告及びその日本総代理店(独占的販売代理店)であるPC 25 Cジャパンに対する背信行為により登録されたと認めることはできない。したがって、本件商標は、商標法4条1項7号に該当するものと認めることはできない。

コメント
 本件事案では、無効理由のいずれもが否定されて、審決が維持されたものである。
 引用商標は国内(4条1項10号)でも、外国(同19号)でも周知性が認められなかった。提出した僅かな使用の証拠では止むを得ない。原告は米国の会社より事業譲渡を受けた者であるが、国内関連商標の移転や更新を行わず、判決中でも、原告は、日本における「UNBRAKO」の商標の商標登録について、十分な関心を持つことなく、適切な管理を怠っていたと認められると言及された。その間に被告が本件商標の登録を受けた事例である。