2024-01-09

工藤莞司の注目裁判:出願商標「ブランディングDX」は商標法3条1項3号に該当するとされた事例

(令和5年11月30日 知財高裁令和5年(行ケ)第10074号 「ブランディングDX事件」)

事案の概要 原告(審判請求人・出願人)は、「ブランディングDX」を標準文字で表してなる商標について、35類、41類及び42類に属する役務を指定して登録出願をしたが拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2023-800)を請求した処、 特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した事案で、拒絶理由は、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当である。

判 旨 本願商標は、構成中の「ブランディング」の文字は、「顧客や消費者にとって価値のあるブランドを構築するための活動」等の意味を有する語であり(証拠略)、「DX」の文字は、「情報通信技術の浸透に伴うビジネスや社会の構造的変革」、「デジタル変革」を意味する「デジタルトランスフォーメーション」 を表す語(証拠略)と認められる。
 政府による「DX推進指標」が公表され(令和元年7月)、閣議決定された「骨太の方針」に「民間におけるDXの加速」が盛り込まれ(令和3年6月)、・・・様々な業務や事業活動、業種等において、デジタル技術の活用の促進による業務の変革(DX、デジタ ルトランスフォーメーション(化))の取組がなされている(証拠略)。また、そのような取組を表す際に、「○○DX」と表すことがしばしば行われている実情があり(証拠略)、ブランディングに関わる業務においても、こうした取組に対して、端的に「ブランディングDX」と称する事例がある(証拠略)。そうすると本件関連役務に関し本願商標に接した取引者・需要者は、「ブランディング」についてのデジタル技術の活用による業務の変革である「デジタルトランスフォーメンション」であること、すなわち「ブランディングのデジタルトランスフォーメーション(化)」を表したものと認識し、理解するというべきである。よって、本願商標は、役務の特徴、質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項3号に該当すると解するのが相当である。
 本願商標を本件関連役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法4条1項16号に該当する。

コメント 本件事案については、知財高裁も、本願商標は政府が関与している施策を表す用語を前提とし、全体では指定役務の内容表示として、3条1項3号及び4条1項16号に該当と認めて、同旨の認定、判断をした不成立審決を維持したものである。審決では、積極的に私的独占に馴染まないとも判断している。知財高裁も、その旨判示したワイキキ事件判例(昭和54年4月10日 最高裁昭和53年(行ツ)第129号 最高裁判所裁判集民事126号507頁)の趣旨を前提としている。政府施策の公表時は、判断時となる審決時の5年前である。この種用語は的確な証拠もあり、3条1項3号該当とされる。