2024-01-10

日本:コンセント制度の導入について特許庁が解説

令和5年6月14日に公布された「不正競争防止法等の一部を改正する法律」により、コンセント制度が導入されることとなった。コンセント制度に係る改正商標法の規定は、令和6年4月1日から施行される。

経緯
 商標法では、他人の登録商標(以下「先行登録商標」という。)又はこれに類似する商標であって、当該商標に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似するものについて商標登録出願をした場合には、商標登録を受けることができない旨が規定されている(商標法第4条第1項第11号)。
 諸外国・地域においては、先行登録商標と同一又は類似する商標であっても、先行登録商標権者の同意(コンセント)があれば後行の商標の併存登録を認める「コンセント制度」が導入されているところ、我が国においては、単に当事者間で合意がなされただけでは併存する類似の商標に関して需要者が商品又は役務の出所について誤認・混同するおそれが排除できない等の理由から、導入が見送られてきた。
 しかしながら、中小・スタートアップ企業等による知的財産を活用した新規事業でのブランド選択の幅を広げる必要性や、国際的な制度調和の観点から、コンセント制度の導入ニーズが高まり今回の改正となった。

改正の概要
 本改正により、商標法第4条に第4項を新設し、同条第1項第11号に該当する商標であっても、先行登録商標権者の承諾を得ており、かつ、先行登録商標と出願商標(以下「両商標」という。)との間で混同を生ずるおそれがないものについては、登録が認められることとなる。
 また、第4項の新設に伴い、商標登録出願が競合した場合の規定である第8条について手当てし、同日に二以上の商標登録出願があった場合にも、コンセント制度の利用が可能となる。
 なお、コンセント制度の適用により併存登録された商標について、登録後の混同防止を担保するため、以下の規定を手当てした。

* 一方の権利者の使用により他の権利者の業務上の利益が害されるおそれのあるときは、当該使用について両商標間における混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求(混同防止表示請求)することができる(第24条の4第1号及び第2号)。
* 一方の権利者が不正競争の目的で他の権利者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる使用をしたときは、何人もその商標登録を取り消すことについて、審判(不正使用取消審判)を請求することができる(第52条の2第1項)。

コンセント制度に関する審査の概要
 商標法第4条第4項の適用の判断にあたっては、先行登録商標権者の承諾及び両商標の間で混同を生ずるおそれがないことを証明する書類の提出が必要となる。当該書類が提出されたときは、審査官は、両商標に関する具体的な事情を考慮して、混同を生ずるおそれの有無を判断する。

 判断基準等、詳細については、現在実施している産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会商標審査基準ワーキンググループにおいて検討している。

詳しくは こちら (特許庁のサイト)