2024-04-23

工藤莞司の注目裁判:商品「サプリメント」と「化粧品」との類否が争われて、非類似とされた事例

(令和6年2月27日 知財高裁令和5年(行ケ)第10108号 審決取消請求事件)

事案の概要 原告(請求人)は、被告(被請求人・商標権者)が有する本件商標「Acnes Labo/アクネスラボ」(登録第6151409号)について登録無効審判(2022-890080)を請求した処、被告は何ら答弁をしなかったが、特許庁は指定商品及び指定役務 3類、5類、44類中、3類「せっけん類」を登録無効とし、その余の指定商品及び指定役務については不成立審決をしたため、原告は、本件審決のうち、3類「せっけん類」以外の指定商品及び指定役務に係る部分の取消しを求めて、知財高裁に対し訴えを提起した事案である。原告引用の商標「アクネスラボ/ACNES LABO」(登録第4791971号)、指定商品及び指定役務は 3類、21類 、42類で、この中、5類の商品「サプリメント」と3類「化粧品」との類否が争われた。

判 旨 指定商品が類似のものであるかどうかは、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号 昭和36年6月27日 民集15巻6号1730頁)。
 「サプリメント」は、人体に欠乏しやすいビタミン・ミネラル等の栄養素を経口投与によって体内に摂取するための食品であり、その使用の目的は健康の保持増進にあると認められる。これに対し、「化粧品」は、身体に対して塗擦、散布等をする方法で使用するものであり、その使用の目的は人の身体を清潔にし、美化し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことにあると認められるから、「サプリメント」と「化粧品」とはその使用方法及び使用目的の根本的部分において明確に異なっていると認められる。
 上記・・・事情を総合すると、本件商標の指定商品のうち 5類「サプリメント」と、使用商標が用いられている商品のうち「化粧品」とは、これらの商品に同一又は類似の商標を使用する場合に、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認められず、商標法4条1項10号にいう「類似する商品」に当たるとは認められない。
 本件商標の指定商品及び指定役務のうち 5類「サプリメント」と、引用商標の指定商品及び指定役務のうち 3類「化粧品」とは、これらの商品に同一又は類似の商標を使用する場合に、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認められず、商標法4条1項11号にいう「類似する商品」に当たると認められないことは、同項10号の場合と同様である。

コメント 本件事案では、商品の類否が争われた最近では数少ない裁判例である。審決は、類似商品については無効成立としたが、原告は、その余の商品についても無効を求めたものである。
 知財高裁は、前掲昭和36年の橘正宗最高裁判例を持ち出しこれに従い判断し、「サプリメント」と「化粧品」は非類似と判断した。特許庁の商品・役務類似審査基準と同じ結論である。同基準は推定の扱いで、個別具体的に争うこと可能であるが、推定を覆すことは簡単ではない。4条1項10号及び同11号の該当要件中、商品の類似を否定したものであるが、前掲判例からも 11号の判断が先ではなかろうか。
 他の争点についても、広義の混同を含めてその虞れはないとして 15号、原告名称の著名な略称とは認められないとして 8号のいずれも該当性が否定され、そして、将来被告に使用意思があるとして 3条1項柱書き違反も斥けられた。