2026-04-21

EU:ジョージ・オーウェルの著名性は商標保護の障害となるのか - Novagraaf

欧州連合知的財産庁(EUIPO)とEUIPO第5審判部における8年に及ぶ長期の審査と審判を経て、2025年12月19日に拡大審判部(Grand Board of Appeal)は、「GEORGE ORWELL」商標についての一部拒絶を維持する決定を下した。Sandrine Collinが解説する。

イギリスの著名な小説家ジョージ・オーウェルの卓越した著名性に鑑み、EUIPOは、「GEORGE ORWELL」を商標として登録した場合、需要者はこれを商品・役務の内容を示すものと認識すると判断した。その結果、出願商標は、とりわけ文化の分野に関連する商品・役務については記述的であり、識別力を欠くと結論付けた。

「GEORGE ORWELL」商標紛争の背景
 2018年に「GEORGE ORWELL」商標は、1950年ジョージ・オーウェルの死後に権利を承継した未亡人によって設立された遺産管理団体(The Estate of the Late Sonia Brownell Orwell)によってEUIPOに登録出願された。出願は第9類、第16類、第28類、第41類を指定していたが、第9類の電子メディア、第16類の印刷物、第41類の文化・娯楽活動に関する商品・役務で、「GEORGE ORWELL」商標が記述的であることを理由に登録を拒絶された。 
 記述的商標とは、「商品の種類,品質,数量,用途,価格,原産地,生産時期,サービスの提供時期又は商品又はサービスのその他の特徴」を示すための用語により構成されるものをいう。「その他の特徴」という文言は特に重要で、これらの具体例が限定列挙にないものを意味するもので、商品・役務に関連する主題、題材、内容もこれに含み得ることになる。したがって、原則として、著名であるか否かを問わず、人名は識別力を有し、商標として登録され得るものであるが、拡大審判部は、その著名性に照らし、「GEORGE ORWELL」という名称が需要者の認識において商品・役務の特徴を想起させる可能性を排除することはできないと判断した。実際、12月19日の決定において、拡大審判部は、商標の記述性は関連する需要者の認識に照らして評価されなければならないとの原則を再確認している。
そして、「GEORGE ORWELL」という名称がEU域内の需要者の間で高度の著名性を有することは疑いがなく、需要者はこれを偉大な小説家と結び付けて理解し、その結果、書籍、映画、演劇作品、展覧会といった対象商品・役務の中心的テーマを示すものと認識するであろうと判断した。このような卓越した著名性ゆえに、「GEORGE ORWELL」という名称は、商標の本質的機能、すなわち出所識別機能を果たす能力を失うとされた。すなわち、需要者は「GEORGE ORWELL」商標を出所表示としてではなく、著者への言及として理解するからである。

著名な名称の商標登録をめぐる課題
 出願人と国際商標協会(INTA)は書面で、著名な名称に対する不平等な取扱いを批判し、著名性の有無にかかわらず人名を保護する権利は保障されるべきであり、より厳格な取扱いに服すべきではないと主張し、さらに、著名な名称が商品・役務の内容を示し得るとするならば、同様の論理は著名ではない名称にも適用されるべきであり、結果として人名の商標登録が不可能となるおそれがあると指摘した。
 また、EUIPOにおいて、同様の商品・役務を指定した作家の名称が既に商標登録されている例として、第16類の「ALFRED HITCHCOCK(アルフレッド・ヒッチコック)」、第9類・第16類・第41類の「ALBERT CAMUS(アルベール・カミュ)」、「F. SCOTT FITZGERALD(F・スコット・フィッツジェラルド)」、および第9類・第16類・第41類・第42類の「IAN FLEMING(イアン・フレミング)」を挙げ、加えて、審判部が「THE DIARY OF ANNE FRANK(アンネの日記)」や「JANIS JOPLIN(ジャニス・ジョプリン)」商標の識別力を肯定した過去の決定にも言及し、これらは第9類および第41類の商品・役務の内容を示すものではなく、商標としての機能を完全に果たしていると評価されている点を強調した。

著名性に「程度」の差は存在するか
 拡大審判部は本件決定において、「JANIS JOPLIN」事案についてはコメントを控えた一方で、「THE DIARY OF ANNE FRANK」が認められた理由として、アンネ・フランクが単一の作品で知られているにすぎないのに対し、ジョージ・オーウェルは「極めて多様かつ膨大な著作により、20世紀前半を代表する文学者の一人として認識されている」点を挙げた。
 名声には程度の差があるのだろうか。それを客観的に判断するにはどうすればよいのだろうか。
拡大審判部の決定は、判断のための基準を列挙しようと試みているものの、評価は依然としてケースバイケースであり、議論の余地が残されている。
 出願人は、拡大審判部の決定を不服として本年2月に一般裁判所へ上訴した。

本文は こちら (George Orwell: Is fame an obstacle to trademark protection?)