2026-06-09

ブラジル:商標制度に新風、優先審査要件を大幅緩和

ブラジルにおける商標審査に要する期間は、依然として企業にとって重要な課題となっている。現在、ブラジル特許商標庁(BPTO:Brazilian Patent and Trademark Office)は、異議申立てのない商標出願についても審査結果を出すまでに平均18~20か月を要しており、より複雑な案件ではさらに長期間を要することがある。
このような状況の下、2025年8月に導入された商標の優先審査制度は、迅速な登録を必要とする企業や商標権者にとって重要な戦略的手段となっている。

商標の優先審査制度は、ブラジル産業財産庁(INPI)の規則で定められた一定の事由が存在する場合に、商標出願および各種申立ての審査を加速化することを可能にするものである。対象事由には、60歳以上の出願人や障害者といった社会的配慮に基づくもののほか、紛争案件、先使用権(ブラジル産業財産法〔法律第9,279号/1996〕第129条第1項)に基づいて異議申立てを行った者、資源・権利の活用を可能にする必要がある場合、あるいは既に優先審査の対象となっている特許と関連して使用される商標に関する場合など、戦略的な事情に基づくものも含まれる。

制度導入以降、BPTOは約2,500件の優先審査申請を受理しており、その大部分(約94%)は60歳以上の個人によるものであった。
さらに、現在適用されている事由に加え、優先審査を申請できる要件の拡大が予定されている。
2026年5月1日に施行された主な変更点として以下が挙げられる。
* 連邦政府の公式行事に関連する商標のための優先審査ルートの新設
* 異議申立てのない図形商標出願に対する優先審査の導入
* 障害者に対する立証書類要件の緩和

BPTOは、2026年5月以降に導入される予定の追加的な優先審査事由も公表した。
具体的には以下のとおり;
* 先使用権に基づき、異議申立に対して答弁書を提出する出願人
* 電子商取引やデジタルプラットフォーム上で事業を行うため、またはプラットフォーム上での侵害行為を停止させるために登録を必要とする出願人
* 家族経営の農業従事者や伝統的コミュニティに属する個人または団体
* スタートアップ企業
* マドリッド協定議定書に基づく国際登録に関連する基礎出願の権利者であって、ブラジルが本国官庁である権利者

さらに重要な変更として、1出願人当たりの優先審査申請件数の上限が、従来の3件から10件へと引き上げられたことが挙げられる。

これらの要件拡大により、BPTOは、商標制度が単なる権利保護の仕組みにとどまらず、イノベーション、起業活動およびデジタル・トランスフォーメーションと整合する経済政策上のツールとしても機能することを改めて明確にし、優先審査はもはや例外的な措置ではなく、ブラジルにおける商標ポートフォリオ管理の戦略手段として位置付けるべきものであろう。