(令和7年4月22日 知財高裁令和7年(行ケ)第10119号 「LINEAREXPRESS」事件)
事案の概要
原告(審判請求人・出願人)は、本願商標「LINEAREXPRESS」の欧文字及び「リニアエクスプレス」の片仮名を上限二段で表示し、指定商品25類「被服、洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽、キャミソール、タンクトップ、ティーシャツ」等について、登録出願をしたが拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2024-9670)を請求した処、特許庁は不成立審決をたため、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて、提訴した事案である。拒絶理由は、鉄道事業に係る「リニア中央新幹線」を引用した商標法4条1項15号該当である。
判 旨
引用商標が、JR東海が開業を計画する本件鉄道の名称として、我が国の取引者、需要者の間で周知であることは、当事者間に争いがない。また、証拠(略)によれば、本件鉄道は、昭和48年に全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画に位置付けられて以降、長期にわたり国家的プロジェクトとして事業計画及び工事が進められ、本願商標の出願時及び本件審決時に至るまで繰り返し、新聞やウェブサイトを通じて報道がされたと認められることからすれば、引用商標の周知性の程度は極めて高いといえる。外観については、両商標は、「リニア」との片仮名部分は共通している。本願商標からは「リニアエクスプレス」との称呼を生じ、引用商標からは「リニアチュウオウシンカンセン」との称呼を生じるところ、「リニア」との部分については称呼を共通にするといえる。本願商標からは「リニアという名称の急行列車」との観念を生じる。一方、引用商標の「新幹線」は、急行列車のうち、JRが運行する全国の主要都市間を結ぶものを意味するから、引用商標からは「リニアという名称のJRが運航する急行列車」との観念を生じ、両者の観念は近似する。これに加え、本件鉄道は、平成元年頃より、「リニア・エクスプレス」、 「リニアエクスプレス」、「Linearexpress」、「中央リニアエクスプレス」等の別称で、書籍やウェブサイトで表示され、これらの別称が定着していると認められること(証拠略)からすると、本願商標に接した取引者、需要者は、「リニアエクスプレス」「LINEAREXPRESS」いずれの表示からも、本件鉄道、すなわち「リニア中央新幹線」を観念するということができる。これらを総合すると、本願商標と引用商標の外観及び称呼は「リニア」と の部分で共通する上、観念は同一であるから、類似性の程度は高いといえる。本願商標は、被服類各種を指定商品とするのに対し、引用商標は鉄道輸送に係る役務について使用されており、本願商標の指定商品と引用商標の役務との間に関連性は乏しい。一方、①・・・、②JR東海を含む鉄道会社が被服(Tシャツ、下着、靴下、 手袋、ネクタイ、帽子、履物)を含む鉄道関連グッズを販売しており、その中には鉄道名が表示されたものも存在すること(証拠略)、③JR東海の連結子会社の中には、百貨店業、卸売業、小売業を営む企業が複数存在すること(証拠略)に照らせば、・・・本件審決時において、被服等を購入する消費者が、当該商品の出所として鉄道輸送を営む会社、その関連企業が含まれ得ると認識する取引の実情が存在したと認められる。以上によれば、本願商標は、原告がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、JR東海の引用商標(本件鉄道)に係る業務を連想又は想起させ、その商品がJR東海あるいは同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように誤認する可能性は相当に高い。したがって、本願商標が15号に当たるとした本件審決の判断に誤りはない。
コメント
本件事案では、知財高裁は、指定商品被服等に係る本願商標「LINEAREXPRESS」は、鉄道事業に係る「リニア中央新幹線」との間において、広義の混同があるとして15号を適用して、審決を支持したものである。レール・デュタン事件判例(平成12年7月11日 最高裁平成10年(行ヒ)第85号民集54巻6号1848頁)に従い丁寧に認定判断し、本願商標指定商品と引用商標役務との間に関連性は乏しいとしながらも、引用商標に係るJR東海等の鉄道会社が被服を含む鉄道関連グッズを販売しており、鉄道名が表示されたものも存在すること、JR東海の連結子会社の中には、百貨店業、卸売業、小売業を営む企業が複数存在すること等を認定して、結論を導いている。被告の立証に基づいたものである。
